会社経営

2021年版「中小企業白書」からデジタル化推進のヒント
を学ぶ

2021.06.04

書いてあること

主な読者:
自社のデジタル化を推進したい経営者
課題:
どうやって取り組めば業績にプラスの影響があるのか知りたい
解決策:
経営者が積極的に関与する業務プロセスや社内ルールの見直しと一体で推進する

1 デジタル化が難局を乗り越えるカギに

 コロナ禍で事業環境が激変する中、「業務のデジタル化」によって難局を乗り越え、事業の継続やさらなる成長・発展につなげようとする機運が高まっています。本稿では、2021年版「中小企業白書」(以下「白書」)から、デジタル化の重要性と、そのカギとなる取り組みに着目し、デジタル化を進めていくためのヒントをご紹介します。

(注)本稿で紹介する図表の出所は全て白書であることや、分かりやすさを重視したことから、出所の記載や注釈は省略しています。詳細な内容を確認したい場合は、白書の本編をご覧ください。また、白書では一部実数が紹介されていないデータがあります。本稿で紹介する図表も実数を示していない場合は、仮定の数値を入れてグラフを作成しています。

2 デジタル化による業績への好影響 成功企業はここが違う

1)デジタル化推進に対する積極性

  • デジタル化推進に対して積極的な文化がある企業は、業績にプラスの影響を及ぼしたとする割合が75.9%

 また、デジタル化推進に対して積極的な文化がある企業は、抵抗感の強い文化がある企業に比べて、「社内の各層にデジタル化の目的・目標などを丁寧に説明している」「研修など、社員のITリテラシーを高める取組を実施している」

割合が高い傾向にあります。

2)試行錯誤を許容する組織風土

  • 試行錯誤を許容する組織風土がある企業は、業績にプラスの影響を及ぼしたとする割合が67.5%

 後述する業務プロセス・社内ルールの見直しに加えて、新しいITツールの導入など、デジタル化推進に当たっては試行錯誤や新たな取り組みへの挑戦も増えます。従来通りを是とするのではなく、失敗も含めて積極的に試行錯誤できる組織風土が、デジタル化推進において重要になりそうです。

3)経営者の積極的な関与

  • 経営者が積極的に関与している企業は、業績にプラスの影響を及ぼしたとする割合が75.0%

 上表の結果に加えて白書の中では、経営者が積極的に関与している企業は、「アナログな文化・価値観の定着」や「明確な目的・目標が定まっていない」といったデジタル化推進に向けた課題を認識する割合が低いことも指摘されています。

4)全社的に推進

  • 全社的に推進している企業は、業績にプラスの影響を及ぼしたとする割合が76.6%

 デジタル化は、個別の部署単位で取り組みやすいことから始めるのが王道ですが、部署単位で終わっていては業績のプラスまでには結びつきにくい可能性があり、部署単位で始めても全社に波及させる必要があるでしょう。また、全社的に推進するほうが、デジタル化が業績に寄与している実感が得やすくなります。

5)業務プロセス・社内ルールの見直し

  • 業務プロセスの全体を刷新した、または業務プロセスの一部を調整した企業は、業績にプラスの影響を及ぼした割合が高い

  • 事業課題の解決のため、社内ルールの見直しを進め、その一環としてデジタル化を進めた企業は、デジタル化推進の取組によりプラスの影響を及ぼした割合が高い傾向にある

 ITツールを導入するだけではなく、目的や達成したい成果などを明らかにし、より効果的にITツールを運用していくために、業務プロセスや社内ルールの見直しと一体的に行うのが、成果を得るために重要となりそうです。

3 参考 デジタル化推進を応援する支援策例

 デジタル化推進に当たって、資金やIT人材の不足などの課題を抱えがちです。国ではこれらの課題に対して、次のような支援策を打ち出しているので、利用を検討してもよいでしょう。

 ITツールを導入する経費の一部を補助する事業です。応募締め切りは複数回あり、現在発表されている最終(3次)締め切りは2021年9月中が予定されています。

■IT導入補助金2021(サービス等生産性向上IT導入支援事業)■
https://www.it-hojo.jp/

 eコマース、テレワークなどさまざまなデジタル化の課題に対して、事務局が適切な専門家を選定して紹介する事業です。本事業の登録受付の締め切りは2021年9月30日です。

■第Ⅱ期 中小企業デジタル化応援隊事業■
https://digitalization-support.jp/

以上(2021年6月作成)

執筆者

日本情報マート

中小企業の頼れる情報源として、経営者の意思決定をサポートするコンテンツを配信。「開業収支」「業界動向」「朝礼スピーチ」など2000本を超えるコンテンツを有するほか、年間200件以上の市場調査も行っている。現在、50を超える金融機関に情報提供を行っている。