税務・財務・会計

決算前に確認! 税負担に影響する「損金」の基本

2019.02.06

1 損金とは

 決算が近づいてくると、会社の業績と同時に、税金の負担額が気になるものです。法人税は、所得(税務上の利益)に対して課される税金であるため、所得が多いほど、その負担も大きくなります。所得は次のように計算されます。

 所得は、益金(税務上の収益)から損金(税務上の費用)を差し引いた金額になります。そのため、損金が増えれば所得は少なくなり、その分税金の負担が小さくなります。
 しかし、経営者が損金に含まれると思っているもの全てが、損金に算入できるとは限りません。
 税負担を考える際に必要な損金の基礎知識として、費用と損金の違いや、損金の分類別の基本的な計上ルールを紹介します。

2 費用と損金に違いがある理由

 損金は、税務上の「費用」と訳されます。ただし、財務と税務では、計算の目的や基準となる法令が異なることから、財務上費用として計上されていても、損金に算入できない(所得計算で差し引くことができない)項目、また、算入できる時期や金額が異なるものがあります。
 財務上の計算は株主や金融機関、取引先に対して、正しい期間損益を算定することを目的としています。そのため、その期間に発生した費用は全て計算に含めなければなりません。
 一方、税務上の計算は国や地方公共団体に対して、一事業年度の法人税等の納税額を計算することを目的としています。税法は、課税の公平(納税者自身の負担能力に応じて税負担を分かち合うこと)や政策上の配慮の観点から定められています。そのため、財務上その期間に発生したと認められる費用でも、見積計算などで算出されたものは、損金に算入することができないこともあります。

3 損金の分類

 損金は次の3つに分類され、税法上で別段の定めがあるもの以外は、財務上の費用の計上基準である「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」によります(財務上の費用と同じ取り扱い)。

  • 売上原価
  • 販売費及び一般管理費その他の費用
  • 損失

 別段の定めがあるもの(役員給与や寄附金など)については、会社が行う支出などが、税法上で定められた性質や金額などから損金に算入できるかどうかを判断することになります。
 以降では、それぞれの項目ごとにその性質、計上のタイミングや、税法上で別段の定めのある主な項目を紹介します。なお、別段の定めについては概要のみの説明であるため、詳細は税理士などの専門家に相談するようにしましょう。

4 売上原価

 売上原価とは、その事業年度の売上(収益)に係る売上原価、完成工事原価その他これらに準ずる原価をいいます。つまり、損金とされるのは、その事業年度に計上された売上と、直接対応しているものでなければなりません。この考え方は財務上も税務上も同様です。
 なお、「売上原価=仕入高」と考えている人は要注意です。仕入高は、商品の仕入時は費用として計上されますが、事業年度末に棚卸しを行い、その事業年度の売上に対応する部分(売上原価)と在庫となる部分(資産)に区分されます。よって、事業年度末の在庫に係る仕入高は、費用(財務上)にも損金(税務上)にもなりません。

5 販売費及び一般管理費その他の費用

1)販売費及び一般管理費その他の費用の要件

 販売費及び一般管理費その他の費用(以下「販管費等」)とは、償却費以外の費用で、その事業年度末までに債務が確定しているものをいいます。具体的には、次の3つの要件を満たしている費用となります。

  • 事業年度末までに債務が成立していること
  • 事業年度末までに支払い原因となる事実が発生していること
  • 事業年度末までにその金額が合理的に算定できること

 例えば、3月末決算の会社における3月分の給料(毎月末締め翌月25日支給)の未払計上について、上記の要件を当てはめて考えてみます。
 会社は、3月の労働の対価として給料を従業員に支払わなければなりません(債務が成立)。もちろん従業員は3月に労働というサービスを会社に提供しています(支払いの原因となる事実が発生)。そして、給料の支給額は毎月厳密に計算されています(金額の合理的な算定)。
 このように損金となる販管費等の多くは、上記の3要件を満たしています。
 ただし、税法上、別段の定めのある項目については、これらの要件を満たしているかどうかではなく、それぞれの定めに従わなければなりません。以降では、別段の定めのある主な項目として、役員給与、寄附金、交際費等の概要を紹介します。

2)別段の定めのある主な項目

1.役員給与

 税務上、損金に算入できる役員給与は、次の3つに限定されています。

 なお、役員給与については、上記のいずれかに当てはまる場合でも、不相当に高額と見なされた部分については損金に算入できないなど、さまざまな制約があります。

2.寄附金

 税務上、損金に算入できる寄附金は、寄附金・見舞金その他どのような名目で行うかにかかわらず、次の通りとなります。

 このように、税務上の寄附金は、一般的な寄附金より範囲が広いため、寄附金に該当するかどうかの判断には注意が必要です。
 また、詳細な説明は省略しますが、寄附する相手先ごとに、損金に算入できる限度額が定められているので注意が必要です。

3.交際費等

 税務上の交際費等は、交際費・接待費・機密費その他の費用で、法人がその得意先・仕入先その他事業に関係のある者等に対する接待・供応・慰安・贈答その他これらに類する行為のために支出するものをいいます。
 実務上、会社が支出する交際費等は多岐にわたり、それぞれの取引ごとに個別具体的な判断が必要になるため、一律の基準に基づいて分類することができません。また、一般的な概念とも異なる点があることから、税務上の交際費等に該当するかどうかの判断には注意が必要です。
 また、損金に算入することができる交際費等の金額は、会社が支出する交際費等の額のうち接待飲食費の50%相当額までとなっています。なお、中小法人(注)の場合は、支出する交際費等の額のうち接待飲食費の50%相当額と、定額控除限度額年800万円のいずれかを選択適用することができます。

(注)中小法人とは、事業年度終了日における資本金の額または出資金の額が1億円以下の法人をいい、普通法人のうち事業年度終了日における資本金の額または出資金の額が5億円以上の大法人による完全支配関係がある子法人等を除きます。

6 損失

 損失には固定資産を売却・廃棄した場合の売却損・廃棄損や、災害等により生じた損失などがあり、それらの事実が生じた事業年度において損金に算入されます。そのため、損失に基づく事実やその発生時期の判断が重要になります。税法上では、損金に算入できる主な損失については、個別に法令・通達が設けられています。
 以降では、判断に迷いやすい主な損失として、棚卸資産の評価損と貸倒損失の税務上の取り扱いを紹介します。

1)棚卸資産の評価損

 棚卸資産の価値が著しく下落した場合には評価損を計上しますが、税務上損金に算入されるものは、一定の事実が生じた場合に限られています。
 例えば、災害により損傷した場合や、売れ残った季節商品で、将来的に通常の価額で販売できないことが例年の取引などから明らかな場合などがあります。
 一方で、価値が著しく下落した場合でも、物価変動や過剰生産などによる場合には、損金に算入することはできません。

2)貸倒損失

 取引先の業績悪化などに伴い、売掛金などの金銭債権の回収が困難になった場合には、貸倒れの処理を行い、貸倒損失を計上しますが、税務上損金に算入されるものは、一定の事実が生じた金銭債権に限られています。
 例えば、会社更生法や民事再生法などの規定により金銭債権が切り捨てられた場合や、取引先の資産状況などから、その金銭債権の全額が回収できないことが明らかになった場合(担保があるときには、担保を処分した後)などがあります。
 また、継続的に取引をしていた取引先に対する売掛債権については、取引を停止したときなどから1年以上経過した場合には、備忘価額(1円)を引いた債権金額について貸倒損失として、損金に算入することができます。

以上(2019年1月作成)
(監修 税理士法人アイ・タックス 税理士 山田誠一朗)

執筆者

日本情報マート

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