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「発明が築く未来の礎」 ―中小・中堅企業の発明応募、受
付中
2025.08.26
2025年は「昭和100年」にあたります。“激動の時代”と言われた昭和ですが、一方で日本では電気炊飯器や新幹線、カーナビゲーションシステムなど多くのものが発明され、人々の生活を豊かなものにしてくれました。
平成を経て令和の時代の足元では、生成AI(人工知能)が話題となっています。精度が向上し、使いやすさや手軽さもあり、一気に普及が進みましたが、AIの発明に特許を認めるかどうかといった新たな議論も生まれました。ただいずれにしろ、AI技術の進化は目覚ましく、例えばスマートフォンが普及し、私たちの行動を変えていったように、人々の生活にとって不可欠なものになっていくと考えられます。
また、今年は大阪市の人工島・夢洲(ゆめしま)で大阪・関西万博が開幕しました。資材や人手不足・準備期間の短さによりパビリオンの建設が遅れる、前売りチケットの販売不振など紆余曲折ありましたが、無事に開幕することができたのは喜ばしいことです。
世界初の万国博覧会は1851年にイギリスのロンドンで開催され、目覚まし時計や印刷機、蒸気機関車などが展示されました。今では当たり前のものでも、当時は珍しく、来場者の興味をかき立てたと思われます。
2025年の今回は「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマとし、158の国・地域が参加しました。空飛ぶクルマや次世代エネルギーによる発電、人工多能性幹細胞(iPS細胞)から作製された実際に拍動する「iPS心臓」など数々の新技術がお披露目され、多くの人にワクワクやドキドキを与えてくれました。実用化され、私たちの生活にとって当たり前になるにはまだ課題がありますが、やがて自分の身近に訪れるだろう未来を感じた人は少なくないでしょう。
時代によって求められる技術や製品は異なりますが、共通するのは少しでも我々の生活を良くしたい・便利にしたい、社会に貢献したいといった人々の熱い思いです。もちろん、最終製品だけではなく、外部から人の目に触れることがないモノ、部品一つでも、そこには多くの英知と努力が結集しています。
私たちの暮らしには、常に困難や予測不能な事態がつきものです。2024年1月に起きた能登半島地震はあらためて地震の怖さを私たちに見せつけました。この爪痕は、まだ完全には癒えていません。地震や台風、豪雨、山火事など自然災害が起こるリスクは常にあり、新型コロナウイルス感染症も喫緊の脅威は薄れたとはいえ、いつ、どこで新たな感染症がはやるか分からない恐怖があります。
さらには、国際情勢の不安定化もあり、先が見通しづらく、不確実性が増している今の世の中ですが、高い志と、たゆまぬ探究心を持って挑んだ発明が私たちの明るい未来を切り開いていくことはこれからも変わりありません。
2024年7月にお札のデザインが一新され、新1万円札の肖像に選ばれた渋沢栄一の言葉に「もうこれで満足だという時は、すなわち衰える時である」というものがあります。「発明大賞」の受賞企業においても、どのような環境下でも、決して現状に満足することのない姿勢が新たな発明につながっていきました。
「発明大賞」は創設から51回を迎えます。中堅・中小企業、研究者や個人の発明家を対象に、優秀な発明考案を生み出し、成果をあげた企業や個人をこれまで表彰してきました。
特色としては、発明大賞の歴代受賞者をはじめとする幅広い企業や個人のネットワークが、発明を生み出す環境を育んできたことです。一つの発明が、世の中を変え、我々は、発明により実現したことによって便利さを享受し、日々暮らしています。先人が築いた業績、数多くの発明がつながることにより生まれる製品やサービスにより、我々がその恩恵を受けていることは間違いありません。発明が新たな可能性を広げていきます。
ぜひ、発明を通じて、その未来を切り開く人々の輪に加わっていただければと願っています。
皆様の応募を心よりお待ちしております。
応募などの問い合わせは(公財)日本発明振興協会(03・3464・6991)へ
発明大賞公式ページ https://biz.nikkan.co.jp/html/hatsumei/
前回(第50回)の主な受賞企業と製品・技術のポイントは下記。
【発明大賞 本賞】
磁線を活用し鉄粉をフィルターにする精密2次ろ過装置(社長・佐澤昌治氏)
ショウナンエンジニアリングhttps://shounan-e.com/

工作機械で使われるクーラント液(冷却液)において、磁石を利用し精密に液中のゴミを取り除く技術を開発した。クーラント液を継続使用すると細かい金属粉が増え、加工精度を下げるため、定期的に切り粉を除去する必要がある。クーラント液が流れる流路の周囲に磁石を配置し、発生した磁力で切り粉のフィルターを流路内に作り出す。
小型化し、濾過に必要なエネルギー量を抑えた。さらに定期的なメンテナンスや部品交換が不要。(ショウナンエンジニアリング=鹿児島県曽於市)
【発明大賞 東京都知事賞】
大気成分の濃縮による農業用CO2供給装置(開発本部本部長・井上宏志氏)

ハウス栽培での農作物の収穫量向上のため、ビニールハウス内に二酸化炭素(CO2)を供給する装置。CO2の吸着剤を準備し、大気中のCO2を吸着させた後、温かい風を送ることでCO2を脱着。植物の生育に適した1000ppm(ppmは100万分の1)のCO2濃度になるようハウス内にCO2を供給できる。大気中のCO2を直接取り込むことで、脱炭素につながる。化石燃料を燃やしCO2を供給する従来法では、CO2の発生や夏場の廃熱が問題だった。(西部技研=福岡県古賀市)
【発明大賞 日本発明振興協会会長賞】
スマホ対応型軽量小型「水」総合管理システム(社長・小松昭夫氏)
小松電機産業https://www.komatsuelec.co.jp/

クラウドを活用しスマートフォンやパソコンなどで上下水道の水位や流量などを遠隔監視や制御できる管理システム。軽量、小型で耐雷性に優れている。すでに設置されている制御盤のボックスをそのまま使うことができ、他社製品に交換用中板キットを組み込むことも可能。中身を入れ替えるだけで作業工数や工事費用を減らせる。自治体での遠隔技術研修もできる。インフラ更新時の費用を安く抑えられる。近年多発する災害復旧時に迅速な社会インフラの復旧作業につながる。(小松電機産業=松江市)
【発明大賞 日刊工業新聞社賞】
ダイカストのランナー加圧法による品質改善と生産性向上(会長・岩本典裕氏)
ダイレクト21https://direct21.co.jp/

アルミニウムを金型に注入し成形するアルミダイカスト加工で製品の品質を向上させる技術を開発した。溶けたアルミを金型の内部に充填した後、金型内部につづく通路にある加圧ピンを押し込むことで、従来の約4倍となる300メガパスカル(メガは100万)の鋳造圧力を実現。内部に発生し強度を弱める“巣”を押しつぶすことで、ダイカスト製品の品質を向上させた。溶けた金属の逆流を防ぐ機構も備える。市場には同様の装置はなく、世界初の製品という。(ダイレクト21=相模原市南区)
出典:ニュースイッチ Newswitch by 日刊工業新聞社