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工場の設備故障診断を支援する「AIエージェント」…日立
製作所、熟練者の“標準脳”に進化させた方法

2026.03.25


 日立製作所は工場の設備故障診断を支援するAI(人工知能)エージェントの提供を2月に始めた。設備の設計図面、熟練の保全技術者のノウハウをAIに学習させた点が特徴。故障の要因診断にかかる時間を大幅に短縮できるほか、過去の故障と完全に一致しない類似故障や新規故障にも対応する。大規模工場から小規模工場まで幅広く提案する。

 日立は提供を始めたAIエージェント「現場サポートAIナビ」の開発に際し、技術検証などでダイキン工業の協力を得た。最初は過去の作業記録を学習させた生成AIの活用を試みた。しかし故障の原因・対策案の正答率は70%以下で「現場で使えるモノではなかった」と日立の長崎圭太主任技師は振り返る。

 どうAIのレベルを上げるか。「設計図面をにらみつつ、故障の原因に迫る」(長崎主任技師)という熟練作業者の行動を参考に、設計図面と熟練技術者の分析スキルをAIに学習させた。

 設計図面は、日立が現場で培った専門知見を生かしAIが読み込めるようデータを転換した上で、熟練技術者にヒアリングし設備の癖も学ばせた。分析スキルは、米マサチューセッツ工科大学で考案された「STAMP(システム理論に基づく事故モデル)」を応用して活用できる形に整え、AIを熟練作業者の“標準脳”と言える水準まで進化させた。

 2025年4月に完成したAIエージェントの故障の原因・対策案の正答率は90%以上と、一般的な保全技術者と同等レベルに達した。また回答時間は10秒以内。ダイキンでは人が故障に対応する場合、要因診断が全体の約半分を占めており、それを10秒以内に縮める効果は大きい。

 発売した現場サポートAIナビはユーザー需要に合わせ、応用プログラミングインターフェース(API)のサービス提供、パッケージ商品など複数の提供方法を用意した。長崎主任技師は「大手から中小まで広く普及させたい」と意気込む。

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日刊工業新聞 2026年03月02日

出典:ニュースイッチ Newswitch by 日刊工業新聞社