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中小企業2社の成功事例にみる省エネ診断の効果

2026.04.20


 省エネ活動を実践しながらも、効果を実感できない中小企業が少なくない。エネルギーのムダ遣いに気づきながらも、対策が分からない工場もある。そうした悩みを解決するのが、専門家による省エネルギー診断だ。埼玉県は3月、省エネ診断を受診した中小企業2社による事例発表会を開いた。即効性のある対策が次々と披露され、聴講する企業も省エネ診断の効果に納得した様子だ。

 セキネシール工業(埼玉県小川町)はガスケット材や断熱材、絶縁材を製造する。最近では廃材を資源として活用した紙製ゴミ箱を自社ブランドとして製品化した。

 同社は2014年から省エネ活動を始めた。負荷に応じて回転数を制御するインバーターをモーターやポンプに搭載し、水銀灯や蛍光灯は発光ダイオード(LED)照明に更新。23年には工場に太陽光パネルを取り付け、発電した電気の自家消費も始めた。

 19年まで電力使用量は順調に減っていたが、感染症の流行や半導体不足があって省エネ活動が停滞。23年に再開したが、社内だけでは限界があり、省エネ診断を受診した。

 診断では主要設備の25カ所に電力計を取り付けた。白木武士課長は「全体の電力使用量は分かっていたが、設備個別まで把握できていなかった。電力監視の重要性を知った」と振り返る。さらにサーモグラフィーで蒸気を使う設備の表面温度を測ってもらうと放熱が見つかった。工程の途中で熱が逃げているため、蒸気の製造に必要以上の燃料を消費している可能性があった。

 診断後、専門家から設備ごとの対策と効果、さらに投資額と回収年数を提示してもらった。131カ所を保温して放熱を防ぐ対策は180万円の投資額で年69万円の削減効果と見積もられた。同社の従業員が設置したことで投資額を161万円に圧縮できたので、3年以内で投資回収できる。他の提案内容も実行し、消費電力量を減少に転じさせた。

 日東精密工業(埼玉県寄居町)はゴム成形用金型や精密切削工具などを製造する。同社は省エネ活動の効果が分からず、施策の動機付けが弱いと悩んでいた。そこで25年9月、本社工場が省エネ診断を受診。すると電力の使用実態が見えた。工作機で5割を使っていたが、空調やコンプレッサーでの使用量も多いと判明した。

 コンプレッサーは休日にもアイドリング運転によって電力を消費していた。また、多数のエアガンからエア漏れや故障が見つかった。専門家からはコンプレッサー2基のうち1基を停止させ、吐出圧力を引き下げる運転を提案された。設備を減らしても操業できる可能性があるためだ。一連の対策によって工場全体の使用量電力の4%近くを削減できそうだと分かった。

日東精密は工場の屋根に太陽光パネルを設置

 大畑勝男取締役は「診断によって省エネ活動による効果が分かり、新しい知識を得られた。次回は3工場まとめての受診を検討したい」と手応えを語る。

 中小企業診断士であり、省エネ診断の実施経験が豊富な柴田敏郎さんは「公平な立場で助言できる」と、省エネ診断のメリットを挙げる。工場関係者や設備メーカー担当者ではないため、投資の必要性についても是々非々で指摘できる。

 ボイラの省エネ診断を得意とする森田智子さんは、伴走支援を利点に挙げる。「例えば従業員が燃料転換が省エネになると知っていても、自社工場で技術的に可能なのか、いくら費用がかるのかまでは分からない。省エネ診断は技術面から費用、効果まで整理して伝えられる」と言う。専門家の助言には説得力がある。

 また、測定機器の使用も省エネ診断ならではだ。レンズを向けるとエア漏れを映し出すカメラがある。「目で見て漏れが分かると、納得してもらえる」(柴田さん)と可視化の効果を強調する。自前の測定機器を持つ企業は少なく、省エネ診断を受けるメリットになっている。

 国や多くの自治体が補助金を出して中小企業の省エネ診断を支援している。中東情勢の緊迫化によるエネルギー価格の高騰が予想されており、省エネ診断のニーズが高まっている。

日刊工業新聞 2026年4月10日

 松木喬 Matsuki Takashi 編集局第二産業部 編集委員

原油高によってあらゆるエネルギーや製品の価格高騰が懸念されています。政府は呼びかけませんが、省エネ・節電はコスト低減にも効果があるので推進してほしいです。ちなみに埼玉県はCO2排出削減設備導入補助金【緊急対策枠】を募集します。

出典:ニュースイッチ Newswitch by 日刊工業新聞社