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中小企業向け “脱炭素学校”、東京・千代田区が実践の場

2026.04.21


 環境省によると全国1200以上の自治体が二酸化炭素(CO2)排出ゼロを目指すと宣言している。その多くの自治体に共通する悩みが、地元企業の参加だ。企業の環境意識は低くないが、脱炭素に向けた行動を起こすきっかけがない。その課題に対して東京都千代田区は実践の場を提供し、地元企業が脱炭素に取り組むきっかけを作ろうとしている。

 3月12日、JR御茶ノ水駅近くの会場で「脱炭素経営による“勝ち筋”」と題したパネルディスカッションが開かれた。三葉ホールディングス(HD)の長船美和子専務、上野硝子工業の上野象平社長が登壇して活動を発表した。2社とも千代田区に本社を置く老舗企業。不動産業の三葉HDはビルを軸とした脱炭素に取り組む。上野硝子工業は断熱効果の高いガラスを供給する。2社とも千代田区の「ちよエコ未来企業スクール」の“卒業生”だ。

 「千代田区の脱炭素は中小企業がカギを握る」。同区の川又孝太郎ゼロカーボン推進技監は、こう強調する。同区には高層ビルが集積しており、大企業の街というイメージがあるが、実際は区内の事業者3万6000社のほとんどは中小企業だ。他の自治体と同様、地域の脱炭素化には中小企業の参加が欠かせない。

 一方で、農林水産業や製造業が中心の地域との違いがある。区内の二酸化炭素(CO2)排出量のうち業務部門(オフィス)が8割、電気の使用に伴う排出量も8割を占める。中小企業がオフィスで使う電気を再生エネ化することが、区の脱炭素に有効だ。

 だが、区内に太陽光発電所や風力発電設備を設置できる場所はない。電力会社からの再生エネ電気の購入が選択肢となるが、電力契約の切り替えで再生エネを使えることを知らない企業が多い。区では連携する自治体から再生エネ電気を調達し、区内の企業にも供給する「Eサイクルちよだ」を展開しているが、利用が広がっていなかった。

 そこで始めたのが、ちよエコ未来企業スクールだ。区内に事業所を置く中小・中堅企業を対象とし、全4回の講座を通じて自社の排出量の算定方法を習得し、削減計画を策定することが目標だ。

 金融機関や損害保険会社の紹介もあって三葉HDや上野硝子工業など11社が参加し、25年11月に開講。参加者にEサイクルちよだを体験してもらった。Eサイクルちよだはウェブ上で利用でき、複数の小売電気事業者から条件に合ったプランが提示される。入札方式になっており、価格も抑えられる。

ちよエコ未来企業スクールでは参加企業が再生エネ電気の選択を体験

 Eサイクルちよだを知った生花の販売・デザイン業の日比谷花壇は、群馬県嬬恋村で発電した再生エネ電気の購入を決めた。嬬恋村はクリスマスツリーに使われるモミの木の産地であり、事業と関連があることから選んだ。Eサイクルちよだは電気代の一部が産地に還元される仕組みにもなっている。リサイクル事業のリーテムはすでに実質再生エネ電気に切り替え、24年度は電力使用に伴う排出をゼロ化した。今回、Eサイクルちよだを利用し茨城県神栖町の再生エネを調達できると分かった。茨城県内に同社の工場があり、購入の検討を始めた。

 ちよエコ未来企業スクールは2月に第4回の講座を開いて25年度は閉講。その後、記者会見、パネルディスカッションと“露出”の場も設けた。千代田エコシステム推進協議会の西田吉蔵事務局長は「目立ってもらうことで、続く会社に出てきてほしい」と狙いを語る。脱炭素に意欲的な中小企業が“見える化”されると、地元の他社にも刺激となる。

記者会見でスクール参加企業が発表(千代田区広報広聴課提供)

 区は脱炭素に取り組むビジネスメリットも追求する。早速、記者会見でスクールに参加した建築設計、建材、緑化の3社が連携し、環境性能の高いオフィスを提供するプランを披露した。千代田エコシステム推進協議会に他のプランも一覧で掲載されている。

 千代田区は地元企業に再生エネ電気の選択、露出による発信、ビジネス機会創出と連続して支援した。発信とビジネス機会は企業にとって実感しやすい脱炭素のメリットであり、地元企業の参加意欲を高めそうだ。

日刊工業新聞 2026年03月13日

松木喬 Matsuki Takashi 編集局第二産業部 編集委員

各地と言えるほど数は多くないですが、地元企業の脱炭素化を支援するセミナーなどを聴講しています。地域ごとにアプローチがあると思います。記事に書き込めていませんが、ちよエコ未来企業スクールは大企業の担当者が講師を務めています。大企業が中小企業を伴走支援するのも、企業が集積する千代田区の特色でしょうか。

出典:ニュースイッチ Newswitch by 日刊工業新聞社

執筆者

日本情報マート

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