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脱炭素、日本の成長に不可欠…環境相・石原宏高氏が語った
こと
2026.05.22
米国が気候変動政策を180度転換して1年以上が過ぎた。国内では太陽光発電所の自然破壊が問題化し、中東危機による原油高も進行する。脱炭素に逆風となる事態が続き、企業にも不安が生じている。日本の気候変動政策に変化はないのか、石原宏高環境相に聞いた。石原環境相は「脱炭素は間違いなくビジネスに結びつく」と力強く語った。
―気候変動対策が揺り戻しや停滞と言われていますが、日本の取り組みは。
「2025年11月にブラジルで開催された気候変動枠組み条約第30回締約国会議(COP30)に参加し、パリ協定で掲げた『1・5度C目標』達成に取り組むことを確認した。欧州は引き続き取り組んでおり、CBAM(炭素国境調整メカニズム)の運用が始まった。日本各地で海産物が捕れなくなったという話を聞く。自然災害も激甚化している。気候変動の影響があると思っており、脱炭素が必要だ。脱炭素、経済成長、エネルギー安定供給の同時実現を目指すGX(グリーン・トランスフォーメーション)に政府一丸となって取り組む。ペロブスカイト太陽電池が商用化されたようにビジネスチャンスもある」
―脱炭素の実現に再生可能エネルギーが不可欠ですが、自然を破壊する太陽光発電が問題化しています。地域と共生する再生エネの普及と、中小・中堅企業の調達支援は。
「政府は国の機関が法令に違反した発電事業者の電気を購入しないことにした。企業や自治体にも同様の取り組みを呼びかけ、全国銀行協会にも手紙を送ってお願いした。環境省としては自家消費型再生エネの導入支援、大企業が取引先の中小企業を束ねて再生エネを導入する事業モデルの構築、地域ぐるみでの脱炭素支援を進める。熊本県では工業団地に再生エネを導入し、企業が自ら再生エネを調達しなくても活用できる環境を整える。取引先から再生エネでの生産を求められた時、進出した中小企業が選ばれる。脱炭素は間違いなくビジネスに結びつく」
―改正資源有効利用促進法が施行されるなど、循環経済に向けた施策も相次いで打ち出しています。再生材の供給拡大やリユース、リファービッシュ(再整備)ビジネスを育てるには。
「環境省は自動車に再生プラスチックの供給量を拡大させる議論をしている。重要鉱物のリサイクルも進める。廃棄後に海外に流出している資源を国内で循環させる必要があり、金属のリサイクルの設備導入や技術実証を410億円で支援する。リユースを促進するロードマップもまとめた。リユースやリファービッシュの拡大にカーボンフットプリント(CFP)が活用できると思うが、まだ消費者にCFPが認知されていない」
―脱炭素製品が売れると企業の成長につながります。一方で脱炭素製品は高コストがネックです。脱炭素製品の市場創出には。
「政府はグリーン購入法によって脱炭素製品を率先して調達し、需要を創出する。また、製品の環境価値を評価する消費者や取引先を増やしていく必要がある。環境省は26年度、脱炭素製品の評価基準を検討し、効果的な情報提供を検証するモデル実証にも取り組む」
経団連からサーキュラーエコノミー推進の提言を受け取る石原環境相(左、4月8日)
―中東情勢の緊迫化によって原油価格が高騰しています。日本として再生エネ導入や省エネが重要になると思いますが。
「50年ネット・ゼロに向けて再生エネや省エネの重要性は変わらない。現在の中東情勢にかかわらず、しっかりと進めていく。日本は年数十兆円を海外に払って化石資源を調達している。再生エネを増やしてエネルギー自給率が向上すれば、それだけ海外に流出する資金が減る」
【記者の目/投資しやすい一貫した政策を】
一貫した政策があると企業は安心して投資ができる。確実に市場があることも大事だ。需要が見込めないと少量しか脱炭素製品を生産せず、コスト高が続く。市場の成長速度が遅いと、電気自動車(EV)のように企業がダメージを受けてしまう。脱炭素に取り組んだ企業が報われる環境政策を進めてほしい。(編集委員・松木喬)
日刊工業新聞 2026年4月17日
松木喬 Matsuki Takashi 編集局第二産業部 編集委員
記事でも書きましたが、頑張った企業が報われる政策を期待しています。日本の排出量は13年度比28.7%減(吸収量を引いた数値)。30年度46%減の達成に向かっていますが、削減幅は年々少なくなっています。石原大臣は事務方に施策の点検と充実を指示しました。リーダーシップに期待したいです。
出典:ニュースイッチ Newswitch by 日刊工業新聞社