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AI活用で業務変革へ、JR西日本が進める人材育成の今

2025.08.26


 JR西日本はAI(人工知能)を活用して業務変革できる人材の育成を進めている。社員や高度人材、経営層と全社的な育成を図り、生成AIやアプリケーションの開発などで成果を出しつつある。2023年度に始めたAI活用の業務変革プロジェクトを25年度から全社的に拡大し、テーマ設定などの初期段階から役員や部門長などの経営層も参画する。その経営層には9月にAIエージェントを導入予定。自らのツールで常に業務変革し続ける方針だ。(大阪・市川哲寛)

 AI活用の文化を根付かせるには「人材がカギを握る」(DX人財開発室)とし、25年度は活用する環境の構築に集中する。全社員が使える生成AIを展開しており、今後全社で生成AI活用による一層の変革を実感できる打ち手を検討する。

 これまでも業務用アプリケーションを簡単に作成できる米マイクロソフトのローコード開発ツール「パワープラットフォーム(PPF)」を中心に取り組み、自社開発の文化は育っている。大規模システムの開発などはベンダーなどの協力を仰ぐ場合もあるが、ツールから自社開発することで「ベンダーと同じ視点で開発できる」と協力しやすい環境になる。

AIを活用した設備の故障判断ソリューション

 高度生成AI人材を活用した業務変革プロジェクトは、23、24年度はコンペティションやワークショップに参加した各部門のエース級人材を中心に個別業務での活用を進めた。エース級人材を半年から1年程度かけて実学を中心に「ビジネスとテクニカルが融合した人材」(同)を育成する。AIを活用して課題の問題点分析などを行い、解決への設計図を描けるようにする。

 ただ「学ぶだけでは身に付かない」(同)とし、アウトプットの経験蓄積を重視する。これまでに改札機など駅の機械故障対応補助アプリケーション「MIRAI」、駅員に規則や顧客対応に必要な情報などを伝える駅員向けエージェントを開発するなど、運用中や運用に近づいているもので数件の成果が出ている。

 25年度はプロジェクトの初期段階から経営層が参加して各部門のどんな課題をどう解決するために伴走するかなどを決める。

 経営課題解決に向けて効率的な手法の確立に加え、要因分析や企画立案の質を高めてより効果的な戦略を打ち出せるようにする。

 経営層向けにはAIの勉強会を年1回のペースで開いているほか、会議では2カ月に1度のペースでAIをテーマに挙げて理解を深めている。5月には人口減とスタッフ減の中で労働力確保のための人材採用策などのテーマをAIを活用して要因分析や解決策立案などを行う動画教材を2回提供した。

 AIエージェントは会議や面談相手に関わる情報の収集、資料の要約などを行う。企画立案に必要な情報を伴ったスケジュール調整も行う。「部門を背負って立ち、戦略を判断するラストマンである経営層が後ろ盾を得る」(同)イメージだ。

 全社でAIを展開できればトラブル対応などの問い合わせ集中によるパンクを防げ、顧客サービス向上にもつながるとして推進する。

日刊工業新聞 2025年07月22日
出典:ニュースイッチ Newswitch by 日刊工業新聞社