ニュース
世界最小のバルブ・ポンプ実現する高砂電気工業、宇宙ビジ
ネスは「中小企業に向いている」と考える理由
2025.01.24
医用・環境分析装置向けで培った流体の精密制御技術を生かし、高砂電気工業(名古屋市緑区)は宇宙分野をターゲットにした製品開発を推進している。得意とする小型・軽量のバルブ、ポンプが宇宙実験用機器に採用されたことに始まり、今では人工衛星に用いるバルブなど重要部品に広がる。「小型・軽量化技術が宇宙分野のニーズに合致した」(浅井直也会長)と新たな成長に向けてビジネスチャンスを狙う。(名古屋・鈴木俊彦)
小型耐薬液バルブ、マイクロポンプを主力製品に持ち、血液分析装置など医用・診断装置向けが受注の半数近くを占める。強みは小型化、軽量化を実現する設計、開発の技術とノウハウ。量産品と一線を画し、顧客の課題解決に貢献している。
人工衛星用バルブ(超高圧小型バルブHVAシリーズ)
世界50カ国以上に、1万点以上の出荷実績を持つ。顧客の要望に応じてカスタマイズするオーダーメードの製品づくりを通じて、少量多品種の生産体制を確立した。
世界最小クラスのポンプ製造を可能にした技術力に、国内外の宇宙研究機関が注目。小型バルブ、ポンプは宇宙空間で行う細胞培養実験や各種分析などで採用実績がある。
当初採用されたのは既存製品だったが、これにとどまらず「宇宙実験を行う狭い空間では長年培ってきた小型、軽量化技術が宇宙分野のニーズに合致する」(浅井会長)と判断。宇宙分野をターゲットにした自社製品の開発を本格化した。
宇宙分野に向けた製品開発で注目を集めた自社製品に、人工衛星やロケットの姿勢制御などに用いるスラスター専用バルブがある。ガスの噴出を制御する推進システムに欠かせない重要部品の一つで、2021年に発表したところ、多くの問い合わせが寄せられた。実機搭載に向けて、由紀精密(神奈川県茅ケ崎市)と共同で同バルブを組み込んだスラスター本体の開発にも取り組む。
宇宙分野への参入はバルブやポンプに続く、次代の事業の開拓、育成が目的。当初は宇宙分野でなく「航空機分野を狙っていた」(同)という。競合が多いなど航空機分野参入でハードルの高さを感じていた時に『宇宙はやらないのか』と、声をかけられたのをきっかけに取り組みを開始。精密流体制御技術とともに、オーダーメードに対応する少量多品種生産で培ったモノづくり技術は、一点物を製造しなければならない宇宙分野で生かせると手応えを感じている。
宇宙分野は社内の未来創造カンパニーで平谷治之社長が担う。得意とする各種実験装置に始まり、宇宙機推進システムへと開発領域を広げてきたが、さらに先を見据えた取り組みが始動している。宇宙で暮らす近未来をターゲットにした製品開発の構想を練っており、例えば、宇宙でビールを醸造したり、微細藻類を培養したりと開発テーマは多様だ。
まだ宇宙分野向けは売上高全体の2%程度。とはいえ「宇宙ビジネスは少量多品種で、きめ細やかなモノづくり技術を持つ中小企業に向いている」(同)と夢が広がる。
日刊工業新聞 2025年01月20日