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製造業はAIでどう変わるか?…工場長の認識、アジアと欧
米で温度差
2025.06.24
アジア積極的・欧米は慎重
未来の工場を展望する―。アクセンチュア(東京都港区、江川昌史社長)は、「モノづくりの未来に向けた変革を再考する」と題する米アクセンチュアの調査報告の日本版をまとめた。AI(人工知能)などのデジタル化を基盤とした高い競争力を備えた工場を「超自動化(ハイパーオートメーション)工場」と定義。実現への課題などについて11カ国・552人(日本は82人)の工場長に聞いた。
調査によると、高度に自動化された未来の工場について、欧米勢は慎重なものの、日本や中国などアジア勢は総じて意欲的。2040年ごろの工場の姿として「人間の管理のもとで、AI駆動の自己学習機能を持つ機械やロボットだけでほぼ完全に作業できるようになるなど、製造業の大きな変化は避けられない」(アクセンチュア)と指摘する。
例えば「自社が新たな施設を建設する際に完全自動化工場(ダークファクトリー)を望む」という回答についてみると、日本の74%、中国の53%に対して、米国が29%、欧州が20%と、アジアと欧米の温度差が大きかった。
さらに「40年までに自社の組立工程でヒト型ロボットが一般的になる」とする回答は、日本の72%が一番多く、2位は中国の65%。米国は35%、欧州は21%だった。
注目は実現への課題。大多数の工場長が「製造に関する知識の蓄積と共有」を挙げ、「高度な自動化への原動力は人材変革だ」と回答。地域別ではグローバルが70%、日本は95%が人材変革の重要性を指摘した。
また、回答者のほぼ半数(日本は52%、グローバルは49%)は人材改革の障壁として、研修プログラムへの多額の投資を指摘。中国は62%が高額な研修への投資が大きな懸念材料と回答した。
「AIに関するスキルや資格を持つ専門家の不足を懸念する」という回答は全体の51%を占めた。地域別ではインドと日本はいずれも懸念が67%だったのに対し、中国は40%と比較的低かった。
このほか、「失業への恐怖心」についても聞いたところ、日本は48%、グローバルは46%。インドは最も多く、70%だった。
一方、多くの工場長はサイバーセキュリティーや産業用IoT(モノのインターネット)など、「眼前のデジタル化対応に追われ未来への対策は不十分」という実態も浮き彫りとなった。
これらの結果を踏まえ、アクセンチュアは「自動化、AI、デジタル化を基盤とするモノづくりの未来は推測ではなく、現実に起こる」と明言。その上で「未来を自ら設計するか、受動的に適応するか」と、未来に向けた変革への道筋を再考することの意義を訴えた。
日刊工業新聞 2025年06月04日