ニュース

冷暖房効率30%改善…山梨大学が実用化へ、「地中熱エア
コン」とは?

2025.09.22


 山梨大学の舩谷俊平准教授は、一定温度に保たれる地中熱を利用し、簡易な工事で省エネルギー化を実現する新型の「地中熱エアコン」を開発した。地中2メートルの深さで冷媒を循環させて室外機の機能を補い、冷暖房効率を20―30%改善する。掘削の深さを従来の地中熱技術の50分の1に抑えた。猛暑日のエアコンの性能低下も防ぐ。大学発ベンチャーを設立し実用化を目指す。

新型の地中熱エアコンの概要

 舩谷准教授が開発したのは、従来のエアコンに簡易に追加できる地中熱システムだ。室外機に四方弁などを追加して冷媒の流路を切り替え、地中に設置した水入りタンク内の銅管に冷媒を通して室外機に戻す。タンクを埋める穴は1×1×2メートルで、小型ショベルで掘削できる。室外機の改造、掘削、タンクの埋設は別日に行える。施工技能者不足を踏まえ施工を簡単にした。

 従来の地中熱エアコンは、地中で水を循環させて地上で熱を冷媒に伝える「間接方式」で、深さ100メートルの掘削が必要だ。山梨大の武田哲明元教授は地中に冷媒を流して効率を高める「直接膨張方式」を開発したが、30メートル掘る必要がある。

 新型の地中熱エアコンは直接方式を施工の観点で改良した。穴が浅いと外気温の影響を受けやすくなるが、地表に断熱材を敷いて影響を抑えた。ZEH補助金の対象となれば、施主の実質負担はゼロになるとみている。

 2026年度中にベンチャーを設立し、建設会社などに提案して山梨県内の建物で実証実験を行う。長期運転データの取得協力を条件に安価に販売する。冷媒の流路変更による影響を調べ、不具合つぶしまで大学が中心に行う。将来は長期運転データと特許ライセンスをエアコンメーカーに提供し、大量生産と全国展開を目指す。

 近年は室外機性能を超える猛暑日が増え、エアコンの性能向上は喫緊の課題だ。寒冷地では酷寒日に室外機が凍り、暖房が一時停止する時もある。地中熱技術は猛暑・酷寒日ほど効果が大きく、問題解消に役立ちそうだ。

日刊工業新聞 2025年9月5日
出典:ニュースイッチ Newswitch by 日刊工業新聞社