ニュース
「規制を守ればいい」だけで十分か…現場の環境対策、再徹
底を
2025.09.22
環境法令順守への意識低下を心配している。企業は“サステナビリティー経営”に熱心だが、排水や排ガス、廃棄物の処理、化学物質管理といった現場の環境対策をおろそかにしてはいないか。公害は過去の問題と思われがちだが、環境法令違反による検挙数は年6000件前後で推移している。
法令順守を担う現場ではベテランが次々と退職し、人員が減っている。いつ法令を違反してもおかしくない“危険水域”であり、現場の環境対策を強化すべきだ。
企業は、ありたい社会を描いて社員と共有する。そして、その社会を実現する商品・サービスの提供を通じて、お客さまを満足させることが経営の根幹だ。環境対策も良い社会をつくるために必要であり、経営に通じる。

環境ビジネスエージェンシー取締役・名倉誠
環境対策は経営そのものであり、今こそトップの理解が不可欠だ。
今、規制が強化されている。「規制を守ればいい」の姿勢で十分なのか。法律の目的を理解し、強化された狙いまで咀嚼(そしゃく)すべきだ。例えば、ある物質が健康や環境へのリスクが懸念されているとする。国が規制していないという理由で使い続け、健康被害や公害を起こしたらどうだろう。企業が「法令を守っていた」と言っても、ブランドは失墜する。
逆に規制強化を予測し、対策をしておくと信頼を得られる。先回りして代替物質を開発できれば、市場を獲得できる。法令を理解して先手を打つ環境対策は、将来を検討してPDCA(計画、実行、評価、改善)を回す経営と共通だ。場当たり的な環境対策では何も生まない。組織として環境のあるべき姿を理解し、一人ひとりが創意工夫をして活動を続けるとプラスアルファも生み出せるはずだ。
環境ビジネスエージェンシーは企業向けに環境法令対応コンサルティングを提供している。グループの環境リレーションズ研究所は森林再生の「プレゼントツリー」を展開している。業務は異なるが根は同じ。汚染の修復には何十年もかかるため、今の公害防止は将来への自然の継承につながる。森林も今、再生しないと豊かな自然を残せない。どちらも100年後のありたい社会のための事業だ。私たちは、良い社会をつくりたいという思いを多くの企業と共有したい。(東京都千代田区神田小川町2の3の12)
【略歴】なぐら・まこと 82年(昭57)青山学院大理工卒、同年松下電器産業(現パナソニック)入社。商品企画や環境本部などを経験。23年環境ビジネスエージェンシー取締役。65歳。
日刊工業新聞 2025年9月5日
松木喬 Matsuki Takashi 編集局第二産業部 編集委員
名倉さんは「ヒアリハット」と同じと言っていました。段差に気づきながらも誰も怪我をしないからと放置し、事故が起きてからだと遅い。環境法令を守る現場の弱体化を知りながら、違反を起こしたら企業への信頼が揺るぎます。