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作業途中で方向性変更も…政府が策定、「AI基本計画」の
特徴
2026.02.27
野放図・強い規制を避けて均衡
政府はAI(人工知能)政策をまとめた基本計画を策定した。特徴は策定過程で徹底活用から信頼性へと重心を移した点だ。策定途中で政権が交代したこともあり、軌道修正している。AIは社会の価値観が投影された技術だ。テクノロジーと倫理や文化、ビジネスが結びつき、それゆえに政策も揺れ動く。企業は変化に追随していくことが求められる。
19日に基本計画の初版が決定され、その場で第2版を来夏にまとめることが決まった。基本計画はリビングドキュメント(動的文書)として、関係省庁や産業界などと調整しながら改定していく。柔軟に見直しを図る現状について、内閣府の福永哲郎統括官は「日本は米国のように野放図ではなく、欧州のように強い規制を導入しても規制できていない状態ではない。国のガイダンスで調整しながら進めるスキームは実効性が高いと世界から注目されている」と説明する。
初版も策定途中で方向性を変えている。例えば、反転攻勢に向けて今こそ、社会全体で「『AIを使ってみる』ことを徹底」という文言が「『信頼できるAI』を使うことを徹底」と修正された。徹底活用から信頼性へと重心を移している。
そして反転攻勢に向けて官民投資の目標額を盛り込むことも検討されたが見送られた。2025年度補正予算ではAIセーフティ・インスティテュートの体制強化やフィジカルAIの安全性ルール整備などの信頼性構築の施策が重点化された。
産業界にとっては政策の予見性が下がることは望ましくない。経済産業省出身の佐藤貴幸企画官は「事業者はアップデートが大変かもしれない。ただ世の中の変化を受けて政策は変わる。変化についていくマインドが必要になる」と指摘する。
テクノロジーと価値観、ビジネスが密接に結びついたAI分野の特徴と言える。これが官民で歩調を合わせて実現できている間は、野放図にならず、強い規制に頼らなくて済む。実効性を保てるかが注視される。
日刊工業新聞 2025年12月26日
小寺貴之 Kodera Takayuki 編集局科学技術部 記者
次の基本計画を来夏までに作成する指示が出ていますが、選挙戦に突入しました。今冬の基本計画は前の政権でたたき台を作っていたので、方向修正はあっても調整の範囲に留まりました。来夏の基本計画は次の政権の意思がはっきり表れるのだと思います。テクノロジーと社会、価値観が密接に結びついたAI分野ではこういうことが起きます。企業がこの変化についていくのはなかなかハードだと思います。今後、より政治や価値観が多極化・多様化して流動的になるであろうことを考えると、理念で判断するよりも、小さく試してエビデンスを蓄える環境があった方がいいように思います。AISIに専門家を集めるので、次は安全な実験環境がほしいところです。また価値観を問い直す破壊的イノベーションについては、多くの人が危ないと思ったら普及速度を緩和する措置や施策があってもいいのかもしれません。極論や強い言説が想像以上の力を持つ時代には、変化のスピード自体もリスクになっているように思います。
出典:ニュースイッチ Newswitch by 日刊工業新聞社