会社経営

ブランディング時に重要な「ロゴ」と知財の問題

2019.02.20

1 ロゴの変更が増えている背景とは?

 ここ数年で「ロゴ」を変更する企業が増えています。例えば、Google、マスターカード、メルカリ、SHIBUYA109など、業種、社歴、規模はさまざまです。これらの企業がロゴを変更している理由の1つは、モバイルへの対応です。
 スマホなどの画面は小さく、複雑なデザインのロゴは見にくいものです。そこで、シンプルな書体を採用し、小さな画面でも見やすいロゴにしているのです。また、ロゴを目新しくすることで、先進的なイメージを作り上げる狙いもあるでしょう。
 とはいえ、見栄えや目新しさだけを理由にロゴを作成しても、得られる効果は限定的です。ロゴの主な役割はブランドイメージの形成です。ロゴでどのようなメッセージを伝えたいのか。この点が明確になっていることが前提となります。

2 ロゴの作成時に必要なメッセージ

 ロゴの作成でまずやるべきなのは、自社の企業としての姿勢や、商品がもたらす価値など、顧客に伝えたいメッセージを明確にすることです。そのメッセージを効果的に表現できるデザインを検討します。
 こうした一連の活動を考える上で、産業機械メーカーのスギノマシンの事例が参考になります。同社では、グローバル市場での競争力を高め、新しい自社の姿を社内外に伝えることを目的として、2016年にロゴや商品デザインなどを変更しました。
 変更の過程では、全社員を対象としたアンケートや、若手社員の一部と経営幹部らが参加するワークショップを実施し、企業理念などの見直しから始めました。
 その結果、「ホントにすごい! 超技術/SUPER! TECHNOLOGY」などのスローガンが生まれました。新たなスローガンを基に、ロゴはグローバルを表現する丸みを帯びた書体、世の中に驚きを与える技術と製品を提供するという意味を込めて「SUGINO」の「I」の字を「!」にしたものに変更されました。
 ロゴや商品デザインなどの変更を通じて一貫したメッセージが顧客に認知されただけでなく、社内にも浸透したことで、従来は軽視されがちだったユーザーインターフェースの改良など、より顧客の視点に立った課題の解決なども進んでいます。

3 ロゴの作成時に注意すべき知財の問題

 ロゴの作成時には、前章で紹介したメッセージの他にも、注意しなければならない点があります。特に重要なのが知財の問題です。自社のロゴの模倣を防止するために法的に保護する、逆に他社やデザイナーなどの他人の権利を侵害しないことが求められます。
 ロゴの保護に関連する法律として、商標法・著作権法・不正競争防止法などがあります。

 自社のロゴを保護する場合、基本的には商標法によってロゴを権利化(商標権)するのが得策です。半永久的に保護されることや、同一・類似のロゴを一部排除できるなどの強い保護が受けられます。詳細は後述しますが、著作権法や不正競争防止法では、商標法ほど十分な保護が受けられない可能性があります。
 一方、主に自社のロゴが他人の権利を侵害しないようにするという観点から、著作権法や不正競争防止法による規制にも注意する必要があります。

4 商標法におけるロゴの保護

1)商標とは

 商標法では、商標(商品・サービスに付される目印)を保護しています。商標の定義は次の通りです。

文字、図形、記号、立体的形状若しくは色彩又はこれらの結合、音その他政令で定めるもの(以下「標章」という。)であつて、次に掲げるものをいう。

  • 業として商品を生産し、証明し、又は譲渡する者がその商品について使用をするもの
  • 業として役務を提供し、又は証明する者がその役務について使用をするもの(前号に掲げるものを除く。)

 企業名や商品名などビジネスで使用する目印全般が該当し、文字だけや図形だけで構成されたロゴ、文字と図形を組み合わせたロゴの他、コマーシャルなどで流れるサウンドロゴなども商標に該当します。
 商標は特許庁に出願し、審査と登録を経た上で、権利(商標権)が発生します。商標権を侵害された場合、侵害行為の差止めを求めること、損害賠償を請求することなどができます。

2)商標法では何が守られる?

 全てのロゴが商標として登録できるわけではありません。自他商品・役務を識別できない商標、公益性に反する商標、他人の登録商標または周知・著名商標などと紛らわしい商標などは、商標として登録することができません。
 登録された商標は工業所有権情報・研修館が運営する「特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)」で公開されています。ロゴの登録を検討する際は、他人が既に登録していないかを調べておきましょう。
 また、登録する際は、商標とともに、その商標を使用している(使用を予定している)商品または役務を指定する必要があります。商標が登録されると、指定商品・指定役務について登録商標を使用する権利を専有できます(専用権)。さらに、他人による類似範囲の使用を排除することができます(禁止権)。

 例えば、自社が「XYZ」という商標を、指定商品のノートブックで登録した場合、他人は「XYZ」という商標をノートブックで使用することはできません。
 また、ノートブックと類似の商品であるルーズリーフ用紙に対しても、「XYZ」という商標の使用を禁止することができます。類似の商品か否かは、特許庁が作成する「類似商品・役務審査基準」に基づいて判断されます。商標自体が類似しているか否かは、商標の外観、称呼(読み)および観念(意味)という3つの点から主に判断されます。
 一方、靴などの非類似の商品の場合、他人は「XYZ」という商標を使用することができます。

3)商標法でロゴを保護する場合の注意点

 前述した通り、指定商品・指定役務が非類似の商品の場合、同一や類似の商標の使用を防ぐことはできません。これを解消するためには、ノートブックだけでなく、靴も指定するなどのように、商標を使用する商品・役務の指定を増やす方法があります。
 ただし、手当たり次第に指定を増やせばいいというものでもありません。商標の出願料や登録料などは、区分数(指定商品・指定役務の数)に応じて変わります。多くの商品・役務を指定すると、その分の費用がかかります。
 加えて、多くの商品・役務を指定して商標を登録しても、実際に使用していなければ登録を取り消される恐れがあります。3年以上使われていない登録された商標に対して、誰でも取り消しを求めることができる「不使用取消審判」という制度があるからです。
 ちなみに、ロゴのデザインを検討する際に、文字だけのものと図形があるものでは、どちらが効力の及ぶ範囲が広いのか、有利になるのかという疑問を持つかもしれません。この点については、それぞれが違う商標であり、一概にどちらのほうが有利ということはできないため、どちらも登録するのが望ましいといえます。

5 著作権法におけるロゴの保護

1)著作物とは

 著作権法では、著作者(著作物を創作した人)等の権利を保護しています。著作物の定義は次の通りです。

思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの

 ロゴが著作物として認められれば、著作権法で保護されます。ただし、詳細は後述しますが、そのハードルは高いといえます。
 著作権法で保護される場合、商標法とは異なり登録は不要です。著作物を創作した時点から自動的に権利(著作権)が発生し、著作権は著作者に帰属します。
 著作権を侵害された場合、侵害行為の差止めを求めることや、損害賠償を請求することなどができます。

2)著作権法では何が守られる?

 著作権は創作した時点から自動的に発生することから、「ロゴは商標登録していなくても、著作権法で保護されるので問題ない」と考える人もいるようです。しかし、一般的に、ロゴは著作物として認められないことが多いとされます。
 特に、文字だけのロゴの場合、デザイン性が高いものでも、著作物として認められるのはハードルが高いとされます。
 例えば、アサヒスーパードライなどのパッケージで目にする「Asahi」のロゴは、図案化されたデザイン性の高い書体が使用されています。一見すると、著作物として認められそうですが、判例ではAsahiのロゴに対して著作権による保護を認めていません(東京高判平8.1.25)。
 文字は万人共有の文化的財産であり、また、本来的には情報伝達という実用的機能を有するものであることなどから、著作権の保護の対象には当たらないとの判断がされています。
 一方、図形を使ったロゴの場合、キャラクターなどは著作物として認められる可能性があるものの、シンプルな図形の組み合わせなどは創作性が低いと判断され、著作物として認められない可能性があります。

3)著作権法でロゴを保護する場合の注意点

 著作権法でロゴを保護するのはハードルは高いといえるため、基本的には商標法によって保護することが適切です。
 とはいえ、ロゴに著作権が認められる場合もあります。著作権は、著作物を創作した著作者に帰属します。そのため、事前にデザイナーなどの著作者とは、著作権の帰属について合意しておくのが望ましいでしょう。
 著作権には、無断で複製されない権利などが含まれる著作財産権と、無断で公表されない権利などが含まれる著作者人格権があります。著作財産権は譲渡することができますが、著作者人格権は一身専属で、譲渡できる性質のものではありません。
 デザイナーなどの著作者には、著作財産権を譲渡してもらうだけでなく、著作者人格権を行使しない旨を了承してもらうなどの対応も必要になります。

6 不正競争防止法におけるロゴの保護

1)不正競争行為とは

 不正競争防止法は、知財だけを保護する法律ではありませんが、商標などの知財に対するさまざまな侵害行為を不正競争行為として定めて規制しています。
 商標に関する不正競争行為としては、周知表示混同惹起行為、著名表示冒用行為などが挙げられます。それぞれの定義は次の通りです。

・周知表示混同惹起行為
他人の商品・営業の表示(以下「商品等表示」)として需要者の間に周知されているものと同一、または類似の表示を使用し、他人の商品・営業と混同を生じさせる行為

・著名表示冒用行為
他人の商品等表示として著名なものを、自己の商品等表示として使用する行為

 それぞれの行為が成立する要件には、周知表示混同惹起行為では需要者の間に広く知られていること、著名表示冒用行為では世間一般に知られていることとされており、著名表示冒用行為のほうが、より高い知名度が必要となります。
 周知表示混同惹起行為や著名表示冒用行為によって、営業上の利益の侵害またはその恐れがある場合、侵害行為等の差止めを求めることや、損害賠償を請求することなどができます。

2)不正競争防止法では何が守られる?

 不正競争防止法では、商標法では保護の対象ではない商標についても保護しています。例えば、商標法では、商標の登録が必要であり、商標の指定商品・指定役務と非類似の商品について商標が使用されている場合には、商標権の侵害は成立しません。
 一方、不正競争防止法では、登録していない商標や、指定商品・指定役務と非類似の商品における商標についても、侵害行為の差止めを求めることや、損害賠償を請求することなどができます。

3)不正競争防止法でロゴを保護する場合の注意点

 周知表示混同惹起行為や著名表示冒用行為が成立する要件は、ロゴが需要者や世間一般に知られていることであり、これから作成しようとしているロゴや、作成してそれほど時間を経ていないロゴは該当しません。
 限られた市場で営業している中小企業などの場合、不正競争防止法で自社のロゴを保護するのはハードルが高いといえるでしょう。
 どちらかといえば、他人の権利を侵害し、周知表示混同惹起行為や著名表示冒用行為に当たらないように注意しましょう。登録された商標ではなかったり、指定商品・指定役務と非類似の商品だからといって、他人の商標を無断で使用してもいいということにはなりません。
 判例では、ソニーの有名な表示である「ウォークマン」と同一の表示を看板等に使用したり、「有限会社ウォークマン」という商号を使用したりした業者に対し、その表示の使用禁止および商号の抹消請求が認められています(千葉地判平8.4.17)。

以上(2019年2月作成)
(監修 Earth&法律事務所 弁護士 岡部健一)

執筆者

日本情報マート

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