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「2024年問題」で存在感、貨物鉄道が需要取り込む

2023.06.27


 2024年度からトラック運転手の時間外労働の制限が始まることで、トラック輸送量の減少が懸念される「2024年問題」。その措置に企業が追われる中、スポットライトが当たっているのが貨物鉄道だ。もとより、輸送で排出する二酸化炭素(CO2)を低減でき、脱炭素化を進める際のモーダルシフトの手段だったが、トラック輸送量の減少を補う受け皿としても存在感が増している。カーボンニュートラル温室効果ガス排出量実質ゼロ)や2024年問題への対策として、貨物鉄道の利用を広げる企業の動きとJR貨物の対応を追った。(名古屋・江刈内雅史)

 JR貨物の西浜松駅(浜松市中区)―福岡貨物ターミナル駅(福岡市東区)間では、4月から31フィートコンテナによるスズキの自動車の純正部品・用品の輸送が始まった。このコンテナには同社の部品工場(静岡県湖西市)から地域の代理店・販売店に部品・用品を供給する役割を持つ「スズキ部品センター福岡」(福岡県久山町)に向けて送る荷物を積載。それを積んだ貨物列車をJR貨物が週2回のペースで運行する。

 スズキは従来も大型トラックと12フィートコンテナを活用した鉄道輸送を使っていたが、これに31フィートコンテナによる輸送も加えることで、貨物鉄道の積載量を高め、CO2排出量の多いトラック利用の抑制を狙う。31フィートコンテナの導入で、大型トラックの輸送と比べ、CO2排出量を約80%削減できる見込みだ。

 もう一つの狙いは2024年問題への備えだ。長時間労働を是正する働き方改革関連法が24年4月に自動車運転業務に適用されるにあたり、トラック運転手の年間時間外労働は960時間に制限される。これに伴う運転手不足が「運賃の上昇や今の物流網が崩れることにつながる」(大平健スズキ部品工場長)ことを懸念し、モーダルシフトの強化に踏み切ったというわけだ。

 こうした中、JR貨物は貨物鉄道の需要の取り込みに積極的だ。列車1編成のうち、半数以上の輸送力をブロック(区画)で貸し切り、往復輸送する「ブロックトレイン」をトヨタ自動車や西濃運輸などに提供したり、トラックで荷物を持ち込み、鉄道用コンテナに積み替えられる「積替ステーション」を4月に岐阜貨物ターミナル駅(岐阜市)近くで開設したりしている。

JR貨物が岐阜貨物ターミナル駅近くに設置した積替ステーション

 また、22年2月から十六銀行、同年3月から名古屋銀行と連携し、「物流やカーボンニュートラルの課題を抱えているお客さまを銀行に紹介していただき、一緒に物流効率化の提案をしている」(江岸靖夫JR貨物東海支社営業部長)。この取り組みで22年度までに計6件の成約につなげたという。

 カーボンニュートラルだけでなく、2024年問題への対策にもなり得る貨物鉄道への注目度は、24年度のタイムリミットが迫るにつれ高まっていきそうだ。

日刊工業新聞 2023年月5月16日

執筆者

日本情報マート

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