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トランプ米政権が逆行の動きも…国連採択10年の「SDG
s」、企業はどう向き合うべきか
2025.03.21
認知度9割、国内浸透
2025年は国連の持続可能な開発目標(SDGs)が採択されてから丸10年となる節目の年。目標の30年まで残り5年となり、ポストSDGsの関心も高まりつつある。一方、足元ではトランプ米政権がパリ協定からの離脱を決めるなどSDGsに逆行する動きをみせ、不透明感が漂う。日本企業はどうSDGsと向き合うべきか、残された課題は何なのか。農林水産省大臣官房審議官、伊藤園取締役などを歴任し、SDGsに詳しい笹谷秀光千葉商科大学客員教授に聞いた。
収益とリンク、企業に差 価値創造、経営者が道筋を
―トランプ政権による反SDGsの動きをどう受け止めていますか。また企業はどう対応すべきですか。
「トランプ政権の動きはSDGsを加速する要因にならないことは確かだ。しかしトランプ氏の発言の真意は何なのか、打ち出した政策をどの程度の“深度”で実行するのかなど不透明な部分はいまだ多い。また気候変動などは眼前の危機であり、多くの米国民も懸念を抱いているはずで、SDGsにまったく関心が払われなくなるという事態にはならないだろう。企業はSDGsが定める17ゴール・169ターゲットのどれに、トランプ政権の影響が及ぶかを慎重に精査し対応していく必要がある」

笹谷秀光氏
―SDGsの採択から10年となります。日本の取り組みをどう評価していますか。
「着実に歩を進めた10年といえる。18年ごろから大企業がSDGsに本気になり、関連リポートなどを相次いで公表した。これにより大企業のサプライチェーン(供給網)に連なる中堅、中小企業も取り組みを本格化した。政府、自治体の普及活動の成果もあり地方にも広がった。各種調査で日本のSDGs認知度は9割に上る。世界でこんな国は珍しく、誇れる成果といえる」
―一方、SDGsを事業と関連付け、収益成長につなげている企業はまだ少ない印象です。
「その通りだ。そもそもSDGsは『環境・経済・社会』のどれもトレードオフにせず、三つ全てを満たせる考え方だ。企業にとっては社会課題解決と収益向上を両立するためのツールとなるが、そのレベルで使いこなせている企業と、そうでない企業で分かれ始めた」
―使いこなすには、どんな取り組みが重要ですか。
「自社の製品やサービスがSDGsの17ゴール・169ターゲットとどう関係しているかを明らかにし、各部門のビジネスに落とし込んでいかなければならない。トップがリーダーシップをとり、推進体制を整え、価値創造ストーリーを描くことが必要になる。それを社外に情報発信することも重要。今の若者のSDGsへの関心の高さを考慮すれば、人材採用面での効果も期待できるだろう」
ポストSDGsは「心身の幸福」 日本伝統の精神生きる

トランプ大統領の発言が注目を集めるが、SDGsの世界的な関心が極端に薄まることはなさそうだ(AFP時事)
―27年に開催予定の「SDGsサミット」で30年以降のポストSDGsの議論が始めるとみられます。注目点はどこに。
「スウェーデンのヨハン・ロックストローム氏ら著名な環境学者らから『SDGsを2050年まで延長する提言』が出された。この中では企業の役割がより一層強化されており注目される。このほか従来の枠組みを超え、より高次の概念として『ウェルビーイング(心身の幸福)』に光が当たる可能性がある。日本には『もったいない』『おすそ分け』といった文化があり、もともとSDGsやウェルビーイングといった考え方と相性は良い。ポストSDGsでリーダーシップを発揮できるポテンシャルはある」
【略歴】ささや・ひでみつ 76年(昭51)東大法卒。77年農林省(現農林水産省)入省。05年環境省大臣官房審議官。06年農水省大臣官房審議官。07年関東森林管理局長。12年伊藤園取締役。20年千葉商科大学教授、24年客員教授。北海道出身、71歳。
【記者の目/企業の取り組み 評価シビアに】
トランプ政権がSDGsに逆行する動きをみせる中、企業の取り組みに厳しい目が注がれるようになりそうな状況だ。経営が苦しくなるとおろそかになるような寄付活動や社会貢献では「見せかけのSDGs」といったそしりを免れない。SDGsを経営に実装し、本業を成長させることで社会課題解決に貢献していけるかが、今まで以上に問われる。(編集委員・後藤信之)
日刊工業新聞 2025年03月07日
松木喬
Matsuki Takashi
編集局第二産業部 編集委員
SDGsが現実社会に落とし込まれていると感じます。再生エネ4ー5割にするエネルギー基本計画はゴール7、プラスチック資源循環促進法や資源有効利用促進法改正案はゴール12、物流などの残業規制はゴール8と、各ゴールに書かれていたことが法規制にもなっています。SDGsを読んで次の法規制を先取りしておくと、笹谷さんが指摘する収益向上につながると思います。