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同族経営者と後継者が知るべき、事業承継と財産の関係

2023.12.14


 蓄積した技術力を生かしてオリジナル製品に進出する中小企業。産業構造の変化によって縮小した祖業に一定の区切りをつけ、それでも祖業で培った技術力を生かして困難を突破しようとしている。多くは家族間で事業承継した意欲的な2、3代目や社長候補である子息が率いる。新事業を成長させるには、親から子へ経営のバトンを着実につなげなければならない。相続と事業承継を支援する青山財産ネットワークスの蓮見正純社長は、「経営者は事業を伸ばすことも大事だが、財産を貯めることも同じだけ重要だ」と説く。蓮見社長に、承継と財産形成の関係について聞いた。

経営者に財産形成が必要な理由

―経営者といえども、引退後の生活を不安に思う方が多いそうです。

 未上場企業の経営者個人では、まとまった資金を持っている人が意外と少ないのが現実です。その理由は、資金があれば会社につぎ込まれることが多く、また所得はあっても所得税が高いので手元にそれほど残らないからだと思います。したがって、引退後の生活資金に不安があると、お子様に承継される場合でも、会社を安心して譲ることも出来ないように思います。そして、それが、知らず知らずのうちに、いつまでも社長や会長として会社にとどまる原因にもなるのです。

―どうすれば良いでしょうか。

 必要なことは個人でまとまった財産を保有することの大切さを理解していただくことと、その実行です。そして承継面で言えば、承継後は会社からの収入に頼らずとも経済的に自立できるだけの財産形成をされることです。それが実現できれば、自社株を次世代に承継しやすくなります。事業を成長させながら、ご自身の財産形成も並行して行うのです。また、財産形成が進めば、承継の選択肢も含めて、ご自身の未来の選択肢を増やすことにもなります。

―企業のリスク管理の観点からも、経営者が財産を持つことが重要なようです。

 その通りです。ファミリー企業においては、企業が経済危機に直面したり、思いもかけない損失を被ることになったりした時に、資金を出すのはご自身しかいないのです。すなわちご自身が最後の資金の出し手になるため、経営者は自分でまとまった資金を持っておく必要があるのです。資金がなければ、様々なリスクに対応し、乗り越えることができません。リーマンショックにおいても、コロナパンデミックにおいても、それが明らかになりました。その視点でも、財産形成が必要なのです。

 経営者にとって財産形成が必要な理由としては、最後の資金の出し手として役割を果たすこと、ご自身に資金的な余裕が出てくると会社への依存がなくなり、会社の財務内容がよくなっていくこと、社会に貢献しようとする気持ちが芽生えること、次世代へ承継しやすくなると、遊ぶことも含めて様々な体験ができるようになること、などがあげられます。

運用のセオリーを学ぶ

―財産の相談で感じていることはありますか。

 若い経営者もたくさん相談に来られますが、お金の貯め方が分かっておられない方が多いと感じます。そして、会社で利益が出たからと言って、節税商品に投資をすることでお金が貯まると勘違いされているように思います。お金が貯まる節税とお金が貯まらない節税がありますので、若い方には貯め方の王道を理解した上でぜひ経営をしていただきたいと思います。

―王道とは。

 会社経営においてお金を貯める王道は、極めてシンプルです。会社で利益を継続的に出して、税金を払います。そして、税金を払って残ったお金のうち、来期の投資向けなどで会社に貯めておかなければならないものは会社に残しますが、それ以外のお金は、会社に残しておく必要はありません。その会社の株式を有する資産管理会社をつくり、そこに配当して、資産管理会社でお金を貯めて資産運用を行う。これが王道です。

 資産管理会社への配当は、ある一定の要件を満たせば、法人税が課税されないため、配当した金額の全額を資産運用に充てることができるので有効です。そして、重要なポイントは、貯めた資金を、安全に運用することです。多くの方が、投機的な運用をされているので、是非、運用のセオリーを学んでいただき、安心、安全な運用を心がけていただきたいと思います。この王道を継続していただくことで、必ず、まとまった財産形成が可能になります。

―金融リテラシーの問題なのか、日本人はお金の運用の話を極端に嫌う傾向があるように感じます。

 特に高齢の方にその傾向があると思います。私も父親から、働いて稼ぐことの尊さを学びましたので、運用するより、みずから汗水垂らして働くことは人として大切だと思っています。しかし、前述した様に、財産は貯めて増やすことが必要であり、特に企業経営者にとっては重要なことなので、ぜひ財産形成について学んでいただき、正しく実践してもらいたいと思います。

―オーナー社長だけでなく、サラリーマン社長でもしっかり財産を築ける仕組みは必要ですか。

 もちろんです。今や、ファミリー企業においても、第三者の力を借りないと経営ができない時代になりました。これは、子供が少ないことから、必ずしもファミリーの中で経営ができる人が出てくるとは限らない、むしろ、出てきたら奇跡かもしれないと感じるほどです。また、能力があっても、別の道を進む方も多いですよね。したがって、創業家から経営者を輩出できない時代になっていますので、所有と経営を分離して経営を行う時代に急速に変化しています。簡単に言えば、優秀な第三者に社長をやってもらわなければならない時代だということです。

 したがって、その人達に意識を高くして事業に取り組んでもらうためには、それなりの財産形成ができる配慮が欠かせません。サラリーマン社長でも財産形成ができる様にしてあげなければなりません。これは、ファミリー企業が存続して行くために必要で重要な経営課題だと認識していただきたいと思います。この課題をクリアできないファミリー企業は存続の危機に直面すると言っても過言ではありません。

 最近、どうしてあげたらよいでしょうかとのご相談も増えており、私もこの課題解決の大切さを痛感しています。最後になりますが、ファミリー企業の永続化において、事業承継と財産形成は、切っても切り離せない関係にあります。当社は経営者の皆様がそれらのポイントを学んでいただき、具体的なプランを立案し、実行していただけるように支援させていただきます。

株式会社青山財産ネットワークス https://www.azn.co.jp/

執筆者

日本情報マート

中小企業の頼れる情報源として、経営者の意思決定をサポートするコンテンツを配信。「開業収支」「業界動向」「朝礼スピーチ」など2000本を超えるコンテンツを有するほか、年間200件以上の市場調査も行っている。現在、50を超える金融機関に情報提供を行っている。