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「トランプ関税」対策で中小支援…政府、海外子会社に米ド
ル融資

2025.05.23


 政府はトランプ米政権の追加関税措置で海外子会社が影響を受ける日系企業への資金繰り支援に乗り出した。米ドルでの貸し付けが可能な制度融資の要件を緩和したほか、日本貿易保険(NEXI)の融資保険を通じて海外子会社への運転資金調達を支援する。米政府は10%の一律関税に加え、自動車や鉄鋼製品などにも追加関税を課すなど対象国や製品が複雑化している。海外子会社を含めた日本企業の経営悪化リスクをカバーする。

「海外展開・事業再編資金」の概要

 政府系金融機関による海外展開する中小企業向け制度融資「海外展開・事業再編資金」の要件を緩和した。海外子会社の売上高減少などを要件としているが、自動車関連など追加関税措置の影響を受ける企業はこうした要件を満たさない場合でも利用できるようにした。米ドルでの融資も可能で、海外子会社を発端とする経営悪化に対応する。また、NEXIの「海外事業資金貸保険」を通じて、海外事業の運転資金調達なども支援する。

 支援策は既に資金繰りに支障をきたしている場合だけでなく、今後影響が出る恐れがある場合も活用できる。足元ではトランプ米政権による関税政策が複雑化し、国内外のサプライチェーン(供給網)に広範な影響が及ぶことが想定される。自動車関連ではカナダやメキシコなど第三国に拠点を構え、米国に輸出する日系企業も多い。追加関税で米国販売が滞り、海外子会社の資金繰りが悪化する可能性がある。

 米国の追加関税をはじめとする保護主義的な政策の広がりは、グローバルで供給網を形成する製造業の事業環境を不安定化させている。政府は日本企業の海外事業に対しても資金繰り対策を講じることで、国内外での事業継続性を確保できるようにする。

日刊工業新聞 2025年4月25日