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「現状維持は最大のリスク」…中小白書が強いメッセージを
打ち出した理由

2026.07.24


AI活用 付加価値高める

 「2026年版中小企業白書・小規模企業白書」は、稼ぐ力に当たる労働生産性の向上に焦点を当てた。構造的な人手不足、インフレによるコスト上昇など中小企業を取り巻く環境は大きく変化する。前例踏襲では現状維持も難しく、地に足のついた戦略を持ちつつも大胆な挑戦が求められる。経済産業省・中小企業庁事業環境部の岡田直也調査室室長に中小企業の進むべき方向性などを聞いた。

 ―「現状維持は最大のリスク」との強いメッセージを打ち出しました。

「デフレやゼロ金利環境からインフレ、金利のある時代に移行しつつある。中小企業にも賃上げが求められるほか、人手不足はより深刻化する。このような経営環境の転換期には今までのやり方で(事業を)続けていくことは難しい。そうした問題意識をメッセージに込めた。中小企業の経営者には、より中長期的な視点で経営戦略を策定し、従来の事業の延長ではなく成長や変革に挑戦してほしい」

 ―労働生産性の向上に必要な取り組みは。

「成長投資の促進は企業の成長に重要な意味を持ち、(投資効果を上げるには)経営戦略がカギを握る。白書では、投資前に業務プロセスを見直した企業は設備の稼働率が高いことを示した。稼働率が高いほど付加価値額も上がる」

 「価格転嫁では取引先を分散している企業ほど価格転嫁率が高い傾向がある。また、より高い価格設定をするためには製品の差別化も重要だ」

 ―AI(人工知能)変革(AX)による飛躍的な成長の可能性を示しました。

「AIは省力化だけでなく付加価値を高める効果も期待される。組織が小さく、経営人材が足りない中小企業にとってAI活用は(組織そのものの)変革につながり得る。大企業よりも(変革の)可能性があるのではないか」

 ―経営リテラシーの重要性も訴えています。

「成長投資など具体的な取り組みの前に、経営力の土台となる経営リテラシーを高める必要がある。原価管理を行っている企業は価格転嫁率が高い。また、柔軟な働き方や社内コミュニケーションの促進など組織活性化に取り組む企業ほど人材採用に成功している。経営リテラシーの向上でさまざまな好影響が見込まれる」(おわり)

【記者の目/支援制度創設 成長機運を波及】

人手不足が進む中、中小企業にも経営戦略の抜本的な見直しが求められる。中小企業庁は、中小企業の労働生産性を5年で15%上昇させることを目指す。「100億企業」の創出に加え、成長意欲の高い売上高10億円未満の企業に焦点を当てた支援制度も創設し、成長機運を波及させようとしている。経営者はこうした支援を活用しながら、戦略的に事業拡大や付加価値向上に取り組む必要がある。(苦瓜朋子)

日刊工業新聞 2026年06月24日

出典:ニュースイッチ Newswitch by 日刊工業新聞社