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中小白書が示す経営計画の策定と業績との相関関係

2025.07.24


 経済産業省・中小企業庁の「2025年版中小企業白書・小規模企業白書」では、経営計画の策定と業績との相関を示している。売上高増加率(2023年と18年の比較)に関して、経営計画の策定企業は7・7%に対し、策定していない企業は5・7%だった。収支や資金繰りに加え、中長期の視点で投資や人材の戦略を練ることが重要だ。トランプ米政権の関税政策などで経営環境の先行きが読みづらく、戦略の不断の見直しも求められる。

販売価格の転嫁状況

 計画策定で落とし込む要素の一つが、製品やサービスの差別化だ。今回の白書には販売価格への転嫁状況に関する調査を取り上げており、差別化と市場環境の両方を意識した戦略を進めている企業の場合、25%以上の転嫁を達成したのは全体の4割弱を占めた。差別化や市場環境への意識が薄い企業で25%以上の転嫁にこぎつけたのは約25%。差別化が中小の競争力や適切な価格設定につながることが改めて示された。

 しかし価格転嫁率が改善しているとはいえ、仕入れ価格の上昇に伴うコスト負担や品質を高める経営努力などを考慮すると、中小の立場は厳しいままだ。企業庁は「製造業の価格転嫁力が弱い」(岡田陽調査室室長)とみている。

 発注者と受注者が適切な関係を築くための環境整備は前進している。改正下請法が成立し、発注者が取引先との協議に応じることなく、コストに見合わない取引価格を一方的に決めることを禁止した。今回の白書では受注側に対し、原価計算などの十分な準備を行い、発注側との交渉に臨むように促した。中小の経営者にはコスト低減に偏った方針から脱却する「経営力」が問われる。

 また岡田調査室室長は「中小はデジタル投資が必要」と指摘する。白書のデジタル化の取り組みに関する調査によると、デジタル技術の活用が進まずに紙や口頭のやりとりが業務の中心と回答した企業が全体の約1割を占めた。設備投資の総額に占めるソフトウエア投資額の割合も、大手企業と比べて低水準が続いている。

日刊工業新聞 2025年06月19日