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中小経営者に求められる閉じた経営からの脱却

2025.07.23


 中小企業の経営者は経営計画の策定と合わせて、社内での業績などの情報共有や経営理念の浸透も重要な役目だ。経済産業省・中小企業庁の「2025年版中小企業白書・小規模企業白書」では、事業規模の拡大に伴って、社員に理念などを周知して主体性を育むことが重要とした。売上高の増加にも弾みが付くと分析している。

社員との経営理念やビジョンの共有

 中小の同族企業は経営の意思決定が迅速な一方で、共有すべき情報が経営陣の一部にとどまってしまいがちだ。社外取締役の登用などでガバナンス(統治)を強化する動きも十分に広がっておらず、不健全な経営に陥るリスクをはらむ。今回の白書ではガバナンスに関連して社外取締役の登用状況の調査結果を示しており、同族企業では9・9%。同族グループの株式保有比率が50%以下である「パブリック企業」は27・1%で大きな開きがある。社外取締役の有無が財務の健全化や部門別のコスト管理などに影響を及ぼす可能性がある。

 企業庁の岡田陽調査室室長は「閉じた経営からの脱却が必要」とみており、経営者は透明性を高めることが必要だ。白書では、社員が自社の経営への理解を深めたり、業務の属人化を防止したりする取り組みにより、付加価値額(営業利益と人件費、賃借料、租税公課の合計)が増加すると指摘する。業務の効率化も見込めそうだ。風通しの良い企業風土を作り、社員の力を引き出す「経営力」が、業績の伸びも左右する。

 中小の経営者にとって、長年の課題である人手不足に対応するためにも、社員に寄り添う経営スタンスが重要だ。賃上げや働き方改革、社内のコミュニケーションの円滑化など、自社の現状を踏まえた手だてが求められる。

 企業庁は中小を地域経済やコミュニティーの担い手に位置付ける。迅速な意思決定を重視しつつ、柔軟性を持つ社内体制を整えることが、混沌とする経営環境を乗り切る第一歩だ。

日刊工業新聞 2025年06月20日