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製品の環境負荷「CFP」算定、中小企業が苦しみながら算
定して分かったこと

2025.12.25


 製品の環境負荷「カーボンフットプリント(CFP)」を算定する中小企業が増えつつある。取引先からの問い合わせが算定の動機となっているが、人材や知見が不足する中小企業にとっては負担が大きい。色素メーカーの日農化学工業(埼玉県八潮市)も課題を抱えながらも、CFP算定に挑んだ。苦労しながら算定してみると、省エネルギー活動との融合が負担を軽減しそうだと分かった。

 CFPはライフサイクル全体を通して排出される温室効果ガス(GHG)。作られてから使われ、廃棄されるまでの製品一生分の環境負荷だ。

 日農化学工業の色素製品は赤シソや赤キャベツなど自然素材が原料。生産した色素は梅干しや麺類、菓子などのメーカーに納入している。ある日、小売り業者からCFPについて質問が届いた。直接の取引先ではないが、椎名隆次郎社長は「納得した」という。2027年3月期から一部の上場企業はサステナビリティー情報の開示が義務化される。取引先を含めたGHG排出量も対象であるため、同社にも問い合わせが来た。

シソ色素の原料となるシソの濃縮液体

 25年4月、中小企業診断士であり省エネ診断の実績が豊富な柴田敏郎氏、武田孝治氏、森田智子氏たちとCFPの勉強を始めた。CFPの算定には製品1品に費やしたエネルギーを明らかにする必要がある。請求書で1カ月の電気とガスの使用量が分かっても、1品単位となる不明。しかも事務所での使用分を除き、生産に投入した電気とガスを知る必要がある。

 そこで電線を挟んで使用データを収集できる計測器を活用した。ガスや水も配管に取り付けて流量が分かる装置を用意した。対象はスプレードライヤーと呼ばれる乾燥機、ボイラ、減圧濃縮機とした。

 色素製品には粉末型と液体型がある。粉末型は原料をスプレードライヤーで乾燥させて粉末状にする。最もエネルギーを使う工程であり、スプレードライヤーに高熱を供給するボイラが多くの燃料を消費する。

 だが、分電盤に計測器を設置しようとすると、どの電線がどの設備と接続しているのか分からなかった。建物が古く、改修もしているためだ。柴田氏によると最新の配電図がない工場は珍しくなく、「当たりを付けて電線を選んだ」。他にも配管の形状と合わず、取り付けられない計測器もあった。

 エネルギーの使用実態を知る「見える化」が推奨されているが、「簡単とは限らない」(柴田氏)。工場は千差万別であり、計測器も万能ではない。椎名社長は「次の設備更新では、エネルギー計測機能が搭載された設備が選択肢に入る」と気づきを得た。

 また、CFP算定には取引先の協力が欠かせない。原料を調達するグループ会社からデータを提供してもらったが、計算すると「明らかに違う値が出た」(武田氏)。グループ会社に確認すると、違うデータが提供されていた。産業界でCFPの算定要請が増えると、不慣れな現場ではデータの取り違いが頻発しそうだ。

 データがそろい、シソ色素の粉末型、液体型の2品のCFPを算定した。すると粉末型の二酸化炭素(CO2)排出量は、液体型の1・2倍だった。スプレードライヤーにエネルギーを使うためだ。一方の液体型は乾燥工程がなく、CFPが少なかった。粉末型を求めるメーカーが多いが、「CFPが液体の訴求になる」(椎名社長)と発見があった。

 また、CFPの内訳でグループ会社での灯油使用に伴う割合が多いことも判明した。グループ会社に排出削減を提案する時、灯油が対象となりそうだ。

 今回、資源エネルギー庁の省エネ支援事業で計測器を活用できた。その成果で日農化学でも省エネの余地が見つかった。今後、取引先から中小企業にCFPの算定要請が増えると予想される。CFPだけを目的にすると算定の負担が大きい。省エネと合わせた算定であれば、エネルギーコストの削減につながるので中小企業にもメリットが生まれそうだ。

日刊工業新聞 2025年11月28日

松木喬 Matsuki Takashi 編集局第二産業部 編集委員
専門家がいないと省エネ診断も、CFP算定も難しいと良く分かりました。CFP算出はやるべき事のよう言われていますが、メリットや支援がないと定着しないとあらためて感じました。本気で普及させるなら専門家の育成も必要でしょう。

出典:ニュースイッチ Newswitch by 日刊工業新聞社