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パナソニックが「再生家電」を軌道に乗せた…年1万台体制
、修理・洗浄にならではのこだわり
2026.01.23
パナソニックは回収した家電を再生するリファービッシュ(再整備)事業を展開している。修理や洗浄にはメーカーならではのノウハウやこだわりを注入しており、再生家電を年1万台生産できる体制を整えた。サーキュラーエコノミー(循環経済)への転換とともに工場存続をかけ、再生家電事業を軌道に乗せた。
パナソニックエンターテインメント&コミュニケーションの宇都宮工場(宇都宮市)が再生事業の中核拠点となっている。リファービッシュ工場に入ると、壁と天井に木をふんだんに使った空間が現れる。“木のトンネル”の奥には、光を背景にして家電が展示されていた。まるで美術館のようだ。この場だけでも、通常の工場とは違うと分かる。
木をふんだんに使用したリファービッシュ工場のエントランス
再生事業は全13品で展開している。宇都宮工場はテレビや洗濯機、食器洗い乾燥機、カメラ、空間除菌脱臭機など7品を担当する。再生の対象は初期不良で返品された商品、店頭での展示品、月額で利用できるサブスク商品。リファービッシュ工場では必要な部品を交換し、清掃して新品のような状態まで戻す。その後、動作を確認して保証を付けてオンライン販売する。
工場内の広い空間が再生作業のスペースだ。テレビは手作業で基板から細かい部品を取り外し、新しい部品を取り付けて映像を確認する。モノづくり統括の進藤靖さんは「ホワイトバランス(色味確認)ができるのがテレビメーカーならでは」と強調する。
精密部品が多いカメラは、ホコリの侵入を防ぐため気圧を高めたスペースで作業する。さまざまな機種に対応できる「カラクリ装置」もあり、モノづくり現場と同じ工夫がある。洗濯機の基板交換や感電検査もメーカーならではだ。
汚れが目立つ食洗器も新品レベルまで洗浄する。細かい汚れまで除去する丁寧さが伝わってくる。「いろいろな洗浄液、洗浄方法を試してきた」(進藤さん)という。
宇都宮工場はテレビの一大拠点として1967年に稼働。「画王」などのヒット商品の量産を担ってきたが、2021年にテレビの生産が終了。竹田恭介工場長は「国内だからできるモノづくりにこだわる」と業務用機器などの生産にシフト。再生家電の生産も工場存亡をかけて始めた。
循環経済への流れも背中を押した。竹田工場長がリサイクル工場を訪問すると、まだ使える家電が粉砕機に投入され、あっという間に粉々にされていた。「部品1点でも故障すると破砕される。修理すればまだ使える」と再生事業に確信を持った。
24年4月、再生事業を開始。25年6月に現在の場所に集約化した。“見せる工場”を徹底し、見学を受け入れている。消費者に「新品信仰」が根強いが、工程を見て再生品への理解を深めてもらう狙いだ。
リファービッシュ工場は展示にも工夫。床も木材
「食べ物にかかわる食洗機は再生品への抵抗があると思っていたが、工程を見て安心して購入した方もいる」(竹田工場長)と見学の効果を語る。また栃木県鹿沼市と協定を結び、市民に再生食洗機のモニターになってもらっている。「キズやにおいがどこまで許容されるのか、手探りの状態」(同)という。
リファービッシュ工場は、地域・社会貢献の場としても位置付けている。将来のモノづくり人材を確保する目的で、中学生に職場体験を提供している。25年4月には聴覚に障がいがある社員が新卒で入社してきた。さらに宇都宮市と連携し、工場を観光コースに入れている。同市を訪れた人の滞在時間を延ばし、地域経済に貢献する狙いだ。
循環経済への移行をめぐり、リファービッシュへの要請が強まっている。4月施行の改正資源有効利用促進法でも、商品寿命を延ばすことを求めている。日本では家電のリファービッシュは中古販売店が担っている。新品を作り続けてきたメーカーが手がけることで、製造業の新たな形態となるのか。竹田工場長は「循環経済なくして工場は存続しない」と言い切る。
【関連技術】パナソニックも注目する元白熱電球メーカーの変身ぶり
日刊工業新聞 2026年1月9日
松木喬 Matsuki Takashi 編集局第二産業部 編集委員
部品が1点でも故障すると買い替え。ボディ含めて粉砕し、エネルギーを投入して素材に戻すのがリサイクルです。リサイクルの手前で、部品を取り替えて使えばエネルギーをかけずに済みます。改正資源有効利用促進法は「CEコーマス」という名称で、修理を推進します。既存の法規制を緩和し、メーカーもリファービッシュに取り組みやすい環境整備に期待しています。
出典:ニュースイッチ Newswitch by 日刊工業新聞社