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郷土の味を次代につなぐ…宇都宮の産学が商品化、栃木「し
もつかれ」が持つ三つの内在的価値

2026.02.27


 日本全国津々浦々に存在する郷土料理には地元の食材がふんだんに盛り込まれている。栃木県の郷土料理である「しもつかれ」も、地元の食材で作られている。長年食べ継がれているものの、苦手な人もいる。かつては各家庭で作られたが、現在はそのような風習も少なくなってきた。伝統を絶やすまいと、宇都宮大学の学生らが立ち上がり、瓶詰として発売されている。しもつかれの灯火(ともしび)は、次代に継がれている。

生臭さ・見た目 解消—文化守りつつ食べやすく

 しもつかれは、2月の初午(はつうま)の日ごろに食べる風習がある。2026年は2月1日が初午に当たる。大豆や大根、ニンジン、サケの頭、酒かすなどを入れて煮込む。冬を越すために食べるものとして、余った食材を活用している。しもつかれブランド会議代表の青栁徹さんは、「かつては3月くらいに食べられていた。大豆は節分で余ったものを使っていた。明治ごろから2月に食べられるようになり、正月で余ったサケの頭が使われるようになった」と話す。同様の料理は栃木県内だけでなく、茨城や埼玉、福島など隣接県でも食べる文化があるという。

 しもつかれは、県内の小学校の給食にも2月ごろに供される。サケが入っていることで生まれる生臭さや酒かすの風味、見た目が子どもたちに敬遠され、栃木県民の間でも好き嫌いの分かれる食べ物だ。青栁さん自身も「かつては苦手だった」。

昨年後半にリニューアルされた「ご飯にかけるしもつかれ」

 ただ、青栁さんがあるデザインのプロジェクトに関わった際、自分の生まれた県の課題を解決しようという流れになり、しもつかれを調べたら、興味深いモノだったという。「長年受け継がれているのに、表面的な部分で敬遠されて評価が伴っていない」と感じた。「しもつかれには三つの内在的な価値がある」と強調。余った材料を活用する「もったいない精神」、各家庭によって作りが違うが、その違いを認め合って続いてきた「多様性の精神」、7軒分のしもつかれを食べると無病息災になると言い伝えられてきた「共同体精神」がその価値だ。「内在的価値をしっかり伝えていく必要がある」(青栁さん)。

 25年に入り、しもつかれは新たな展開をみせた。ユーユーワールド(宇都宮市、小川拓矢社長)が、25年2月に「しもつかれ」を元にした瓶詰「ご飯にかけるしもつかれ」を発売したためだ。酒かすを控えめにし、サケの代わりに栃木県産のヤシオマスを使うことで、酒かすの香りや魚の生臭さを抑え、食べやすく仕上げた。

宇都宮大学の学生やユーユーワールド小川拓矢社長らが議論を何度も交わして「ご飯にかけるしもつかれ」を製品化した

 開発に携わったのが、宇都宮大学の学生らだ。地域デザイン科学部の石井優衣さんは「長い間食べ続けられているのに嫌われているなんて、しもつかれがかわいそうだった。だからハッピーに食べられる仕組みを作ろうと思った」と開発のきっかけを話す。

 開発は一筋縄ではいかなかったという。味が決まらなかった上に、「瓶に入れると、発酵が進んで味が変わってしまい、においも強くなっていた」と石井さんとともに開発に携わった篠原葵さんは話す。そこで、何パターンか味付けを作り、食塩としょうゆの味付けに決定。瓶内での発酵を抑えるために、ヤシオマスの皮をしっかりと剥いだ上に骨は入れず、ニンジンを多めに入れた。その上で、熱殺菌を施し、発酵を止めた。

 石井さんや篠原さんは、栃木すみつかれ部というサークルを立ち上げて、活動している。同部の梵天ゆず太郎さんは「1000年続いてきたものをなくすのは簡単。それをなくさないように活動している。しもつかれを嫌われ者にせず、若い人にも食べてもらいたい」と強調する。

 ご飯にかけるしもつかれは25年後半にリニューアルを実施。食塩としょうゆによる味付けから、塩こうじに変えて塩味を強め、より米飯に合う味付けにした。ラベルも変えた。

 青栁さんは味は時代によって変化するものと認識し「瓶詰も今の時代に合う形に変化するタイミングだから出てきたものだろう。これで未来に受け継がれていけばうれしい」と話す。しもつかれへの思いは、次代に受け継がれている。

日刊工業新聞 2026年01月30日

松木喬 Matsuki Takashi 編集局第二産業部 編集委員
栃木支局の山田記者が執筆しました。郷土料理「しもつかれ」の三つの「内在的な価値」、興味深かったです。「もったいない精神」、違いを認め合う「多様性の精神」、そしてもう一つ「共同体精神」。

出典:ニュースイッチ Newswitch by 日刊工業新聞社