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求む39歳以下の中小企業後継者。第4回「アトツギ甲子園

2023.08.22


 日本の経済成長を支えた「団塊の世代」が75歳以上の後期高齢者となる2025年が近づく。その数、約806万人。65歳以上が総人口に占める高齢化率は30%を超え、労働人口の減少が加速する。人材確保が難しくなる中、とりわけ深刻になるのが国内企業の99%にあたる中小企業の事業承継だ。

 政府系金融機関が2023年1月に実施した事業承継に関する調査によると将来、廃業予定の中小企業は57.4%。このうち28.4%が後継者難を廃業の理由に挙げている。こうした中には経営状態の良い企業、高度な独自技術を持つ企業も含まれており、日本の競争力低下が懸念される。

今こそ後継者にスポットライトを

 中小企業庁は高齢化する現役経営者に対し、次世代への早期の事業承継を促す支援を展開してきた。近年は金融機関などにも事業承継の相談窓口が設置され、親族が事業を受け継ぐ「親族承継」にとらわれない、M&Aなどによる「第三者承継」が増加。信用調査会社の動向調査でも「後継者不在率」が改善してきている。そこで中小企業庁は次の主役となる「後継者=アトツギ」の活躍支援にも力を入れ始めた。後継者が既存の経営資源を生かした新規事業アイデアを競うピッチイベント「アトツギ甲子園」は本年度で4回目の開催。7月20日にリアルとオンラインのハイブリッドで開かれた「中小企業の日」のイベント「アトツギ支援コンソーシアム」でエントリー受付開始の“のろし”を上げた。「発表事業の売り上げが伸びたり、発表時には構想段階だったプランが見事に事業化されたりしている。知名度向上にもつながるのでこの機会を生かしてほしい」(越渡一郎中小企業庁事業環境部財務課係長)。

補助金の優遇措置について解説する越渡係長

 「アトツギ甲子園」は39歳以下で代表権を持つ前の承継予定者が参加できる。親族外の承継者や、すでに別法人の代表者であっても家業の承継予定があれば、エントリー可能。参加者は先代経営者が育ててきた人材やノウハウといった経営資源をもとに練った新規事業のアイデアを提案し、最優秀賞の中小企業庁長官賞を目指すことになる。新規性や実現可能性、社会性、経営資源の活用度、事業への熱量・ストーリーが審査のポイントだ。

 出場者には各種補助金で優遇措置を実施する。決勝大会に進んだファイナリストと、優秀な事業プランだったものの惜しくも決勝進出を逃した準ファイナリストは、小規模事業者持続化補助金の後継者支援枠(特別枠)の申請が可能になる。さらに地方大会の出場者も事業再構築補助金やものづくり補助金、事業承継・引継ぎ補助金などの審査で加点が受けられる。

 今年は地方での裾野をより広げるため、地方ブロックを北海道・東北、関東・中部、近畿、中国・四国、九州・沖縄と、昨年までの三つから五つに細分化。書類審査後、来年1月26日の九州・沖縄大会を皮切りに順次、地方予選を開き、3月8日に決勝大会を開催する。エントリーの締め切りは本年12月15日。

応募件数190件超。第3回大会

 本年3月に決勝大会を開いた第3回「アトツギ甲子園」は過去最多となる192件のエントリーがあった。書類審査をクリアし、西日本、中日本、東日本の各地方大会に進んだのは計45人。この中から15人が決勝大会に進んだ。最優秀賞を受賞したのは苗木生産を手がける家業と自身の林学博士号の知見を組み合わせて、森づくりコンサル業を始めたグリーンエルム(大分県日出町)の西野文貴さん。持ち時間4分の中で、森づくりをCSR市場と繋ぎ、人と自然の距離を縮める「里山 ZERO BASE」について語った。その後各種メディアに取り上げられ、県庁副知事を表敬訪問するなど大きな反響があった。

第3回大会で中小企業庁長官賞を受賞した西野さん

中小企業支援機関と連携して事業承継を促進

 挑戦する後継者に対する支援を全国に広げるため、中小企業庁は後継者支援を実施・検討している支援機関などに呼び掛け、趣旨に賛同する有志で「アトツギ支援コンソーシアム」を立ち上げた。後継者支援の気運を支援機関側から高めるのが狙いだ。7月20日には後継者支援の好事例を共有するイベント「アトツギ支援コンソーシアム」を開催した。今後「アトツギ支援コンソーシアム」と「アトツギ甲子園」の両輪で後継者支援を盛り上げていく。

〇エントリー方法・詳細
詳細は以下のURLからご参照ください。
「アトツギ甲子園」特設HP:https://atotsugi-koshien.go.jp/

提供:経済産業省中小企業庁
(令和5年度後継者支援ネットワーク事業)

執筆者

日本情報マート

中小企業の頼れる情報源として、経営者の意思決定をサポートするコンテンツを配信。「開業収支」「業界動向」「朝礼スピーチ」など2000本を超えるコンテンツを有するほか、年間200件以上の市場調査も行っている。現在、50を超える金融機関に情報提供を行っている。