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知っていますか? ビジネス現場で使われる野球用語
2024.06.21
2023年の新語・流行語大賞ノミネート語30の中には「アレ(A.R.E)」(阪神タイガース)と「憧れるのをやめましょう」(WBC)、「ペッパーミル・パフォーマンス/ラーズ・ヌートバー」(WBC)の野球関連語が3つあった。
この賞は、毎年「野球関連語の多さ」がオジサンっぽいことで有名だ。もう開き直って選んでいるのだと思う。
ちなみに、2022年の大賞は「村神様」で、ほかに「青春って、すごく密なので」、「大谷ルール」、「きつねダンス」、「令和の怪物」、「BIGBOSS」と野球関連語が30語中6つもノミネートされていた。多すぎないか?
さらにちなみに、2021年の大賞は「リアル二刀流/ショータイム」だった。2023年の大賞が「アレ(A.R.E)」だから、大賞は3年連続野球関連語になる。ちょっと待て。世の中はそんなに野球中心に回っているのか?
ビジネスの現場でも、野球用語を使った会話が多い。しかしオジサンたちが育った時代と違い、いま地上波テレビでのナイター中継はほとんどない。いや、ナイターどころか、若い世代はそもそもあまりテレビを見ないのだ。それに、スポーツならサッカーもあるではないか?バスケかもしれない。
そんな中で、若手社員に「打席に立ってナンボ」とか「とにかく塁に出ろ」などと野球用語を使っても、それはちゃんと伝わっているのか? ビジネス会話に潜む野球用語を確認してみよう。
4番/3割/9回/2死:数字の価値観の違い
1番目と2番目では、ふつうは1番目の方が優れている。これが世の中の常識だ。さらに3番目、4番目…と続くほどに価値が落ちていく。これも常識だ。ならば、「彼はウチの4番」と紹介された場合、「いや、4番目の人より1番目の人の方がいい」と思う方が自然ではないか?
お茶は「一番茶」だからありがたい。ビールは「一番搾り」だからおいしそう。「四番茶」、「四番絞り」なんてものを出されても、あまり嬉しくはないだろう。「4番」に価値があると思っているのは野球オジサンだけなのだ。
「3割」もそうだ。野球を知っていれば、3割打てば立派なものとわかっている。だが、たんに数字だけを見ると、普通の感覚は「たった3割」ではないだろうか?テストなら、30点は赤点。7割程度いかないと及第点とは言えない。
両方併せて、ある人物を「4番で3割の人」と紹介すれば、野球オジサンとしては相当な誉め言葉のつもりだ。が、若い世代や女性は「そこそこの人」、いや、むしろ「期待されていない駄目な人」という意味に受け取るのではないか?
「9回裏2死」というのは、ギリギリの土壇場表現としてよく使われる。しかし、たんに数字だけで考えれば、ふつう区切りは9ではなく10ではないか?2死だってそう。スリーアウトで終わりという野球のルールを知らなければ、次は3死、4死…と続きそうだ。2という数字に区切り感はない。
たまに、テレビでバレーボールや卓球の試合に出くわすことがある。熱戦のラリーで「決まった! これで勝ちだ」と思っても、ゲームはたんたんとそのまま続くことがないだろうか?「ん? 1セットは何点なんだ?」。馴染みのない競技はよくわからないのだ。「15点? 21点? いや、25点なのか?」。区切りの数字を知っていなければ、土壇場ギリギリの緊迫感は共有できない。
同様に、ビジネスの現場で「9回裏2死からの大逆転だ!」とハッパをかけたところで、「じゃ、次は10回だな」とか「2死って何?」と思われていたのでは、土壇場感は伝わらない。9回や2死という数字に特別な意味を感じるのはオジサンの野球脳なのだ。
続投/肩:ビジネスに肩は関係ない
トップが留任・再任するとき、あるいは担当者がそのまま継続するときに「続投する」という。だが、彼らは別にこれまで「投げ」てはいない。むしろビジネスにおいては「途中で投げ出す」、「放り投げる」など、「投げる」には悪いイメージの方が強いのではないか?
また「肩が温まってきた」、「肩ができてきた」などと評価する会話もある。肩、使いますかね? ビジネスの現場において。温まった肩でパソコンのキーを力強く打ったり、受話器をガチャンと置かれても、周囲がうるさいだけだ。
全員野球/ボール:もはや野球の話
これはもはや野球の話だ。野球とかボールって言っちゃってるし。
ビジネスをスポーツの団体競技にたとえる気持ちはわかる。「全員で一丸となる」ことは大事だ。しかし、そもそも団体競技は「全員」でやるものだ。なのに、わざわざ「全員野球」と言うのはなぜか? だって「全員サッカー」、「全員バスケ」、「全員ラグビー」なんて言葉はあまり聞かないではないか。
多くのスポーツは、攻撃も守備も競技中は全員が動いている。ところが野球は、基本が「守備9人VS攻撃1人」なのだ。一番多い満塁時でも「守備9人VS攻撃4人」。ということは、攻撃側は常に半分以上が休んでいるのだ。なるほど、それでベンチにいる連中に「声を出せ!」なんて言うのか。
ビジネスにおいても、声ばかり大きいが実はなにもしていない人がいる。だったら「全員野球」という言葉は意味があるなあ。いや、野球じゃなく「全員ビジネス」だが。
【改造案】
「4番で3割の人」は「1番で8割の人」とした方が、世間の数字の価値観に合う。
<著者略歴>
藤井 青銅(ふじい・せいどう):作家、脚本家、放送作家、作詞家。1955年山口県生まれ。「第一回星新一ショートショートコンテスト」に入選。以降、作家兼脚本家・放送作家になり、ラジオ番組「夜のドラマハウス」、「オールナイトニッポン・スペシャル」、「NHK FM青春アドベンチャー」などの製作に携わる。現在製作に携わるのは「オードリーのオールナイトニッポン」(ニッポン放送)。腹話術師のいっこく堂の脚本・演出、プロデュースも担当した。著書に「国会話法の正体」(柏書房)、「一芸を究めない」(春陽堂書店)、「『日本の伝統』の正体」(新潮社)、「トークの教室」(河出書房新社)など。
Xアカウント:@saysaydodo
<雑誌紹介>
雑誌名:機械技術 2024年1月号
判型:B5判
税込み価格:1,760円
<販売サイト>
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日本の中小金属加工メーカーは高精度・複雑形状部品や難削材への対応など、加工技術を磨くことで生き残りを図ってきた。一方、産業構造の変化や労働人口の減少などが進む中で今後も会社を発展させていくには、自社の“売り”となる新たな価値を見いだす必要がある。特集では、「多角化」、「オリジナル製品開発」、「デジタル化」、「働きやすさ」などのキーワードで変革を目指す10社を取材。取組みや課題から、中小金属加工メーカーが持続的に成長するためのヒントを探る。
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